アフリカに深く浸透する中国:その関与は新たな段階に来ている

28594796956_7b6db24d6a_b

中国が出資したアディス・アベバ-ジブチ鉄道(亚吉铁路)は、2016年10月から運行されているアフリカで初となる電気鉄道だ。エチオピアの首都とジブチ港を繋いでおり、内陸のエチオピアにとって重要となる海洋圏への鉄道アクセスを提供している。これにより、エチオピアの貿易品のうち95%以上がジブチを経由することになる。

長年に渡って数十億ドルが費やされた同プロジェクトの全長は、752.7キロ(466マイル)におよぶ。時速120キロで走行すれば、車で3日かかるところを12時間にまで短縮することが可能となった。今後5年間、運行管理を請け負った中国人管理者や技術者、駅長がエチオピア人関係者を教育し、その後は彼らが業務を引き継ぐ。

このプロジェクトは、1970年代に中国が建設を支援したタンザニアにあるダルエスサラーム港とザンビアの中央州である都市カピリ・ムポシを結ぶ、タンザン鉄道(TAZARA)を想い起こさせる。当時、中国のGDPはアフリカにある多くの国よりも低かった。今日、中国は世界第二位の経済大国として世界的な影響力を誇っている。

アフリカ大陸に中国が深く浸透することは、何を意味しているのだろうか?

多面化する中国とアフリカの関係

中国とアフリカの協力関係は、急速に多面化している。例えば中国のファーストレディーである彭麗媛(ほう・れいえん)とマラウイのファーストレディーであるガートルード・ムタリカは、共に篤志家として知られているが、この2人のファーストレディーは最近になってアフリカにおけるエイズ撲滅で協力することに合意した。

深く広範な関わり

まずはじめに、エチオピアと東アフリカの経済発展を促していく新たな鉄道事業は、中国のアフリカに対する関与が、いかに深く、そして広範に渡っているかを強調するだろう。エチオピアは近年、世界で最も急速に発展している経済のひとつで、何百人もの人々が貧困から抜け出している。

エチオピア政府は、農業中心の経済から近代産業中心の経済へと転換を試みており、とりわけ、インフラやその他の公共事業に重点を置いている。それゆえこの新たな鉄道は、エチオピア経済の転換にとって非常に重要な意味を持っている。

新たな鉄道によって、エチオピアと中東、ヨーロッパ、中央アジアとの貿易は増加が見込まれる。期待される貿易の急増にともなって、ジブチが恩恵を受けることは明白だ。中東国の大多数にとってアフリカのメインゲートにあたるジブチは、域内とグローバルな貿易における地位を今後も向上させるだろう。果物や野菜、花などの高付加価値な輸入品でビジネスを行うチャンスが増加することで、アフリカと中東の貿易はさらに魅力的になるだろう。

巨大なポテンシャル、二国間協力

第2に同鉄道事業は、中国の財政や建設能力を実証するだけでなく、同国の巨大なポテンシャルと二国間協力に対する意欲を示している。同鉄道は2011年から2016年の間に、国営の中国鉄路総公司グループ(China Railway Group)と中国土木技術建設会社(China Civil Engineering Construction Corporation)によって建設された。また、中国輸出入銀行と中国開発銀行、そして中国工商銀行がその資金供給をおこなった。総額40億USドルが同鉄道に投資され、そのうちの70%が中国による投資だ。

経験豊かな中国の建築業者にとって、時速120キロの速度で走る鉄道の建設は難しくないが、エチオピアでの建材および技術者不足を考慮すれば、品質や工期に妥協することなく完成させたことは、大きな業績と言えるだろう。

また中国は、ナイジェリアやアンゴラ、コンゴ民主共和国、ケニア、タンザニアを含む多くのアフリカ各国で、主要な鉄道プロジェクトを進めている。中国の鉄道建設技術と財政能力を持ってすれば、いつの日か、ジブチ沿岸から大西洋までを横切る大陸横断鉄道が中国の支援によって建設されることも夢ではないだろう。

ローカルに配慮した事業

第3に同鉄道は、中国のアフリカに対する新たなアプローチを表している。それは、ローカルなニーズをより汲み取ったものだ。

中国はこれまで、アフリカでプロジェクトをおこなう際にも自国の作業員を連れて来るため、地元に雇用を創出していないこと、環境や労働・安全問題を重要視していないことが批判されてきた。一方で中国企業にとっては、鉄道技術について知識を持った地元の技術者が十分にいないことが、アディス・アベバ-ジブチ鉄道の建設においても深刻な障害となっていた。例えば、鉄道のある部分を完成させるために2万人の労働者が必要となったが、この労働力を中国人だけで賄うのは不可能であった。

この課題に対処するため中国企業は、地元技術者の教育をエチオピアにおける日常業務に組み入れた。これによって鉄道建設の十分な労働力と、将来の鉄道運営を担う上での有能な人物を確保することができた。環境の観点からもアディス・アベバ-ジブチ鉄道は、電気を利用したエコ・フレンドリーなシステムとなっており、地域の緑化に配慮した開発を実現している。

新たなアプローチ

その他にも、中国の新たなアプローチは見られている。ファーウェイ(Huawei)のような中国企業は、アフリカ企業とパートナーを組みながらアフリカのデジタル経済を加速させようとしている。

中国の自動車メーカーBYDモーターズは、アフリカで初めて公共交通機関として電動バスを使用する都市である南アフリカのケープタウンに、電気電池式バスを供給する優先的入札者に選ばれた。こうしたクリーンなエネルギーで走るバスは、住民に持続可能な公共交通システムを提供するだけでなく、南アフリカが環境に関する目標を達成する一助にもなる。

根強い懸念の声

だが、アフリカにとって同鉄道は恩恵を生んでいくものの、中国によるグローバルな野心を懸念する人々の声を和らげることにはならなさそうだ。この問題は、中国の勢いが脅威になるかどうかではなく、特にアメリカなどの他国が、それに対して対処できているかということだ。

中国は、サハラ以南全土での投資と利益を守ろうとしている。現在同国は、彼らにとって初めてとなる海外軍事基地をジブチに建設中だが、近隣にはアメリカの国家安全保障にとって重要な施設が位置している。それはアフガニスタン国外では最大となるドローン基地を含んだ、4,000人以上が駐留するアメリカ軍の基地だ。

警戒するアメリカ議員

米中関係をゼロサムゲームだと見る向きもある。アメリカのローラバッカー下院議員(カリフォルニア州選出)とクリス・スミス下院議員(ニュージャージー州選出)は、2015年3月付の書簡でアシュトン・カーター国防長官とジョン・ケリー国務長官、そしてスーザン・ライス国家安全保障問題担当大統領補佐官に、「ジブチにおける中国の前例なき投資と、長年にわたる同国指導者の気がかりな態度」について警告した。

2人の下院議員は、中国によるインフラ投資が「戦略的な影響力への投資にすり替わる」かもしれないと警告する。また「われわれは、重大なテロ対策活動をはじめとした、アフリカの角(Horn of Africa)周辺における自国の利害が、同地域で増大する中国の戦略的支配力によって影響を受けることを懸念している」とも記している。

アフリカ地域におけるテロ・海賊行為との戦いや、平和と開発の推進において、米中がいかに協力していくかというアイデアは、同議員らに浮かばないようだ。

こうした懸念があるものの、中国による「一帯一路(One Belt, One Road)」構想が軌道に乗れば、アフリカ各国に対する中国の関与はさらに深まっていくだろう。また同時に、アメリカを含む先進国に対する中国の投資は、記録的な規模に達している。中国が世界的大国への地位に徐々に近づくにつれ、アメリカ内の批判者をはじめとした他国の人々は、自らに問いかける必要が出てくるかもしれない。その準備はできているか?と。

AUTHOR

朱志群

朱志群

米・バックネル大学教授(政治・国際関係)。中国によるアフリカなど各国への投資を研究している。国立シンガポール大学東アジア研究所の客員研究員も務める。