⏩ マスクが手を出せる政府予算は全体の10%のみ
⏩ 退役軍人の解雇は身内からの反発も招いた失策か
⏩ マスクでさえ「非常に困難」と語る今後のハードルとは?
政府の非効率を解消すべく、起業家のイーロン・マスク率いる政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)が “解体” を断行している。
たとえばマスクは1月下旬、政府職員に対し、辞職と引き換えに8か月分の給与を支払うというメールを送信した。分岐点(Fork in the road)という題名やその内容から、マスクが Twitter 買収時に従業員に宛てたメッセージを彷彿とさせる。
1月下旬に政府職員が受け取ったメールの一部(Office of Personal Management, Internet Archive より筆者スクリーンショット)
他にもマスクは、政府職員の退職手続きに目をつけている。アメリカ政府は1960年頃から、職員の退職書類をペンシルベニア州にある石灰岩鉱山の地下で管理してきた(*1)。
DOGE は、退職関連手続きがおこなわれている施設の写真を公開した
そこでは700人以上の職員が毎月約1万件の退職申請を処理しており、手続きの完了に数ヶ月かかる場合もある、と DOGE は指摘している。2014年の Washington Post 紙の報道によれば、1980年代から自動化の必要性が認識されてきたものの、歴代政権はそれに失敗し、鉱山の地下では手作業による紙ベースの処理が今も続いているという。
世論調査では、政府支出の削減が党派を超えて支持されている。だが、2月中旬の世論調査では、マスクが政府内でおこなっている仕事について、「賛成」が 34%、「反対」が49% となった。
バージニア州の Tesla の販売店前に集まった人々は「誰もマスクを選んでいない!」あるいは「マスクをクビにしろ!」と叫んだ
2月下旬、DOGE 内部から造反者が出た。DOGE は1月の大統領令に基づき、前身のデジタルサービス局(USDS)を改名・再編した機関だが、その技術系職員21人が2月25日に一斉に辞職している。彼らは辞表の中で、
我々は、DOGE の行動を実行したり正当化するために専門知識を貸すつもりはありません
と述べて、マスクたちが進める取り組みに抗議した。
新政権発足から1ヶ月あまりで早くも物議を醸している DOGE だが、その取り組みは上手く行くのだろうか。上手く行かないとすれば、それは何によって阻まれるのだろうか。
(*1)ちなみに、この鉱山は元々 US スチールが所有していたものだったが、1960年から政府によって利用され始めた。1998年からは管理会社である Iron Mountain 社が鉱山の所有者を買収し、政府に貸し出している。鉱山の地下という奇妙な場所で書類が管理されている理由は、1950年代に政府が人事ファイルの保管場所を確保するため、広大なスペースを必要としたからだという。
DOGE とは何か?
DOGE は、政府効率化省という正式名称にもかかわらず、正式な政府機関ではない。前述したように、トランプ大統領の大統領令によって設立され、諮問機関として機能している。