⏩ インバウンド客の旅行消費額増加に繋がる可能性大
⏩ アメリカやヨーロッパの一部地域では大きな収入減に
⏩ 実現には乗りこえるべき課題も
2023年8月21日、観光庁の高橋一郎長官は訪日観光客の急増を受けて、年内にも観光客数がコロナ前の水準に戻るという見通しを示した。
2022年10月頃から、パンデミックに伴って減少していたインバウンド客(訪日外国人観光客)の人数は、増加を示している。8月10日には中国政府が日本への団体旅行を解禁したこともあり、今後もインバウンド客数は増加を続けると予想される。
このようなインバウンド客の増加は、パンデミックによって停滞していた観光業に好影響を与えると考えられる。しかし観光業の成長のためには、単に観光客の数を増やすだけでなく、観光客1人あたりの観光に伴う出費(旅行消費額)を増やすことも必須だ。特に、オーバーツーリズムの問題が浮上しつつある日本では、一人一人の観光客が国内で使う旅行消費額を増やすことが重要になる。
一方、観光庁の発表によると、パンデミック前の2018年頃まで、インバウンド客1人あたりの旅行消費額は15万円程度で推移しており、この水準で頭打ちとなっていた。この壁を乗り越えるために、今年3月に日本政府は、2025年までに1人当たりの旅行消費額を20万円まで引き上げる案をとりまとめた。
旅行消費額を増やすために政府が注目しているのが、ナイトタイムエコノミーだ。海外と比べて、日本には夜間に活動できる観光地や観光体験が少なく、その差は例えば、ナイトショー(夜間のイベントなど)の体験にあらわれている。Webアンケートをもとに観光庁が2018年に公表した調査によると、日本以外の国を訪れた観光客の内「ナイトショー」を体験した人の割合が約30%であるのに対し、日本を訪れた観光客では約10%と少数だった。このような事情を考慮すると、日本では夜間観光を促進することによって、一人あたりの旅行消費額を増やすことができると見込まれる。(*1)
では、ナイトタイムエコノミーとは何なのだろうか。現在なぜ注目されていて、どのような課題があるのだろうか。
(*1)観光庁が2018年に公表した調査は、JNTO訪日プロモーション対象の20か国・地域(イギリス・アメリカ合衆国・インド・フィリピンなど)を対象にしたアンケート調査にもとづいている。この調査では、「ナイトショー」の他に「ナイトライフ」「ナイトツアー」「ナイトコンテンツ」「ナイトレクリエーション」に関しても扱われており、これら全ての項目において日本国内における体験数は、日本国外における体験数より少ないことが分かっている。なお、各項目の具体的な内容については観光庁の資料に書かれておらず、その内容は各回答者がイメージするものであったと推測される。