昨年末、日本マクドナルドは「マックフライポテト」の M および L サイズについて販売を休止した。販売は12月30日に再開されたものの、今月7日には再び M・L サイズが休止され、現在まで続いている。ポテト不足は
- 船便の経由地であるカナダ・バンクーバー港近郊での大規模な水害
- コロナ禍での世界的な物流網への混乱の影響による輸入遅延
- バンクーバーにおける貨物の滞留や雪の影響による混乱、航路上での悪天候
が原因だと指摘されている。
実はポテト不足が起こっているのは、日本だけではない。韓国やケニアでも、ファーストフード店で使用されるポテトが不足しており、その背景には上記以外にも理由が存在している。
世界中で生じているポテト不足の背景には、何があるのだろうか?
カナダで「世紀に一度」の水害
日本マクドナルドは、マックフライポテトやハッシュポテトで使用するじゃがいもを米国とカナダから輸入している。
米国のワシントンやオレゴン州、カナダのアルバータ州などで栽培されたじゃがいもは、下揚げされてから急速冷凍され、主に船便によって出荷される。今回、ポテト不足が生じた大きな原因は、船便の経由地であるカナダ・バンクーバーで昨年11月、大規模な水害が発生したためだ。この水害は「世紀に1度」のレベルと呼ばれており、地域に壊滅的な被害をもたらした。
大規模な被害
カナダのブリティッシュコロンビア州に位置するバンクーバーでは、昨年11月14日から15日にかけて、平年の1か月分に相当する250mmもの豪雨に襲われた。洪水や土砂災害によって、1万8,000人が避難を余儀なくされた他、5人の死者も確認されている。
洪水で被害を受けたバンクーバーの様子(Northwest, CC BY 4.0)
この洪水による被害総額は、75億ドル(約8,500億円)にのぼるとも言われ、同州の歴史上において最も大きな経済的損害となった。現在でも高速道路などの損傷は続いており、1月18日まで非常事態宣言は延長されている。
壊滅的な被害をもたらした洪水の背景には、2021年の夏に起きた記録的な山火事の存在がある。
洪水と山火事の関係
近年繰り返される洪水や山火事は、直接的な因果関係を特定することは難しいものの、専門家によってそれぞれ気候変動との強い繋がりが示唆されている。また山火事と水害の間にも深い関係があることで知られており、気象予報士の森さやか氏は、以下のようなメカニズムを指摘する。
火事で地面が焼けると舗装された道路のように表面が固まって、水を吸い込みにくくなることがあります。そのため、雨が降っても地面にたまることなく、すぐに流れ出てしまいます。
さらに、山火事により焼失した木々の残骸、灰などが地表を覆っているために、それが水で一気に流され、家屋や建物、橋などを壊していくのです。
ブリティッシュコロンビア州の水害も、同年夏の山火事によって被害が拡大したと指摘されており、カナダ政府はインフラストラクチャの強化を約束している。つまり気候変動の影響によって山火事が生じやすくなり、それが同じく気候変動の影響を受けて増大する水害の被害を、より一層拡大させたという見方だ。
貨物の輸送拠点
そして、ブリティッシュコロンビア州が世界的な貨物の輸送拠点であることから、この水害は国際的に影響をもたらした。