Tokyo Tower(Christian MacMillan, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

なぜ若年女性は、東京へ集中しているのか?

公開日 2022年07月07日 16:44,

更新日 2023年09月20日 09:58,

有料記事 / 社会問題・人権

今年1月、東京都は1月1日時点での都内の人口が推計1,398万人余りと、前年に比べ約4万人減少したと発表した。東京都の人口が減少したのは、1995年以来26年ぶりとなる。

その原因としては、出生率の低下による自然減に加え、外国人の出国による減少の影響も指摘されている他、コロナ禍におけるテレワークの普及により地方移住への関心が高まったことがあげられている。この人口動態の変化を受け、様々な自治体が脱首都圏を検討する労働人口の受け皿になろうと策を練っている。

しかしこの現象について、東京への一極集中が解消される動きだと判断するのは早計だ。例えば、昨年の間に東京都からの転出先として多かったのは、神奈川県、埼玉県、千葉県などの首都圏だ。以降も大阪府、愛知県、茨城県と大都市圏がつづく。東京圏(*1)に対象を広げれば、2021年も8万人を超える転入超過であった。コロナ前と比べれば弱まっているとはいえ(2019年は15万人近くの転入超過)人口が大都市圏に集中する全体の傾向は変わっていない

そんな中、人口のジェンダーバランスに着目すると、興味深い事実が見えてくる。東京都の転入人口の内訳をみると、若い女性の割合が高いのだ。具体的には、2021年の東京都の移動人口では、男性は転出超過だった(転入22万2,220人、転出22万3,564人)のに対し、女性は転入超過だった(転入19万7,947人、転出19万1,170人)。中でも20-30代の若い女性が、女性転入者の70%以上を占め若い女性ほど東京志向が目立っている

東京都における転入超過数は、以前から男性よりも女性の方が多い傾向にあった。2014年に開始された現行の統計データからも、東京都の転入超過数は男性よりも女性の方が常に多い水準を保っていることがわかる。そして、その傾向はコロナ禍を経てさらに強まっていると言える。2019年では1.4倍だった男女差は、2021年には2.2倍へと拡大しているからだ(*2)

なぜ若年女性の首都圏への集中が進んでいるのだろうか?そして、それによってどのような問題が起こるのだろうか。

(*1)東京圏は、東京都心から50-70kmの範囲内にある東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県、茨城県の一部を指す。
(*2)人口データについては以下を参照。住民基本台帳人口移動報告2021年結果e-stat.

女性の東京への一極集中が進む理由

ここでは、女性のキャリア志向の高まりと、地方の就労環境の悪さという2つの視点から見ていく。

キャリア志向の高まり

女性の首都圏への流入の理由としてあげられるのは、女性のキャリア志向の高まりだ。

まず、女性の高学歴化が進んでいる。2020年度における女性の4年制大学進学率は50.9%(前年比0.2%増)と年々上昇傾向にあり、55%前後で横ばいとなっている男性の割合と同水準に迫ってきている。また2021年度における学部学生の女子は、119万7,000人と過去最多を記録している。

こうした高学歴な女性は、就職の機会に首都圏へと移動する傾向が強いと考えられる。

2021年の東京都への転入数は、20-24歳の女性が29.5%と最も多く、その次が25-29歳の23.3%と続く。つまり大学卒業後などに、職を求めて東京に転入する女性が多いことが分かる。2021年の25-34歳女性の就業率は80%を超えており、この10年で約10ポイント以上上昇していることと合わせて考えれば、女性が東京へと集中する傾向は、その高学歴化およびキャリア志向と相関性があるという指摘には、一定の説得力がある。

地方の就労環境の悪さ

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✍🏻 著者
東京大学大学院博士課程
東京大学大学院総合文化研究科所属。日本学術振興会特別研究員。専門はフランスの絵画・建築史。関心領域は、フランスの社会や政治、およびスポーツやアートに関係すること。
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