今年も、土用の丑の日(7月23日)が近づいている。そして、土用の丑の日と言えば、やはりウナギだ。今年も多くのスーパーや外食チェーンで、多くの人がウナギを買い求めることだろう。
しかし、近年ウナギは絶滅が危惧されており、すでに環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定している。結局のところ、我々はウナギを食べてもいいのか?もしくは、どう食べるべきなのだろうか?
土用の丑の日を前に、改めてウナギに関する事実を整理・理解しておこう。
そもそもウナギはどこから来るのか?
「ウナギをどう食べるべきか?」を考える前に、そもそも、我々の食卓に並ぶウナギはどこから来るのだろうか?
日本で流通しているウナギのほとんどは養殖物だ。水産庁の統計によると、国内で供給されているウナギのうち、天然物は0.1%ほどしかない。なお、国内で養殖されたウナギも全体の33%ほどで、海外からの輸入が最も大きな割合を占めている。
ただし養殖といってもウナギの場合は、自然界で採捕(*1)した天然の稚魚(シラスウナギ)を育てているに過ぎない。後にも説明するように、人工的な環境で卵の状態からウナギを肥育することはハードルが高いためだ。つまり、我々はほとんどの場合で養殖されたウナギを食べているが、それらは全て、ある意味で「天然物」なのだ。
(*1)ウナギ漁では、漁獲のことを「採捕」と表現する。
ウナギは減っているのか?
では、ウナギは本当に減っているのだろうか?ここでは、日本で主に食べられているニホンウナギについて考えてみよう。現在のところ、ニホンウナギ全体の減少程度を直接的に示すデータは存在しない。なぜなら、ニホンウナギは東アジアに広く生息する国際資源であり「全ての地域でどれだけ減っているのか」を捉えることは難しいためだ(*2)。
しかし、部分的には天然ウナギの生息数の減少が明らかになっている。中央大学の海部健三教授らが岡山県で行った調査によると、同県では2016年までの14年間で天然ウナギが約80%減少したとされる。
また採捕量の推移を見ても、成魚(成長したウナギ)、シラスウナギ(稚魚のウナギ)ともに明らかな減少傾向にある。日本での成魚のウナギ採捕量は1960年代には年間3000トンを超えていたが、2021年度はわずか63トンにとどまっている。シラスウナギについても、1960年代には採捕量が年間200トンを超えていたが、2021年度の採捕量は11トンと推定されている。
そして、この採捕量の減少を根拠として、ニホンウナギは国内外で絶滅危惧種に指定されている。ニホンウナギは環境省と国際自然保護連合が作成するレッドリストの双方で、絶滅の危険性が上から2番目に高いカテゴリーに分類されている。つまり、日本のみならず、国際的に見ても「ニホンウナギは減少している」と推定されているのだ。
(*2)ニホンウナギは太平洋南部の西マリアナ海嶺を産卵場として、その後、稚魚が海流に乗って東アジア方面に流れ、各地の河川などで成長する。
なぜウナギは減ったのか?
では、なぜニホンウナギはこれほど減少してしまったのだろうか?