内閣府の男女共同参画局は6月14日、『令和4年版男女共同参画白書』(以下『白書』)を公表した。この中で、独身20代男性の4割が「デート経験がない」と答えた調査結果が報道され、SNSでも話題となった。
『白書』によれば、20代男性のうち65.8%が配偶者・恋人を持たず、また独身者の39.8%が、中学卒業以降にデート経験がないと答えた。一方20代女性では、配偶者・恋人のいない割合が51.4%、また独身者のなかでデート経験がない割合は25.1%だった。
一見すると、この数字は現代の若者が「恋愛離れ」をしている、あるいは恋愛に消極的であるかのような印象を与え、そのような報道も散見される。しかし反対に、若者の「恋愛離れ」は「政府やマスコミによる嘘」だという主張もある。
果たして、若者は「恋愛離れ」をしていると言えるのだろうか?まずは若者の恋愛の現状と変化を、デート経験や交際経験を示すデータから概観してみよう。
若者の「恋愛離れ」は本当か?
まずは若者が「恋愛離れ」をしているという現状認識は、どの程度妥当なのだろうか。
はじめに『白書』で話題になったデート経験の増減を見ていく。しかしそれだけでは若者の「デート離れ」は知れても「恋愛離れ」は判断できないため、合わせて異性の恋人を持つ若者の割合を示す統計を参照する。
デート経験のある若者は減ったのか?
一般財団法人日本性教育協会『青少年の性行動全国調査』によれば、若者のデート経験は過去20年でやや減少しているものの、下落幅は小さく、40年前と現在で大きな差があるわけではない。具体的に言えば、1974年における大学生男女のデート経験率は約70%で、1999年に80%程度に上昇したものの、2017年には再び70%程度に下落している(*1)。
冒頭で紹介した男女共同参画局の『白書』は、今回はじめて「デート経験」の項目を調査しているため、ここからは「若者の恋愛離れ」という結論は導けない。ただ少なくとも日本性教育協会によれば「若者のデート離れ」は20年前に比べて進行しているものの、40年前の水準まで戻ったに過ぎないと言える。
加えて、2017年の高校生や中学生のデート経験を見ると男女ともに上昇傾向にあり、これから若者全体のデート経験率が下降し続けるとは限らないことがわかる。
(*1)『青少年の性行動全国調査』と『白書』では、デート経験を示す数字が大きく異なるが、その理由は設問内容や調査対象者などにあると考えられる。前者では大学生全体が母数であるのに対し、後者では独身の20代が母数となっている。
恋人を持つ若者は減っているのか?
デート経験を調べるだけでは、若者の恋愛経験全般については判断できない。一般的に恋愛は、デートをするだけではなく恋人を作ることによってスタートすると考えるのが妥当だからだ。よって、どのくらいの若者が恋人を持っているのかという割合の推移を見る必要がある。