⏩背景にはフォアグラの生産方法が残虐との批判、「強制給餌」と呼ばれる生産方法は倫理的課題が大きい
⏩鳥インフルエンザの流行もフォアグラ生産に影響
⏩日本やフランスでは、培養フォアグラ開発の動きも
高級食材として知られるフォアグラが、徐々に「禁忌食」となりつつある。2019年には米・ニューヨーク市議会でレストラン等でのフォアグラの販売を禁止する条例が可決され、英国でもフォアグラの輸入を禁じる法案の検討が進んでいる。
なぜ世界各地でフォアグラへの規制が広がっているのか。その背景には「フォアグラの生産方法が残虐」という根強い批判がある。こうした動物への配慮に沿った消費行動はエシカル消費とも呼ばれ、いま大きな注目を集めている。
規制に加えて、最近では過去最悪と言われる鳥インフルエンザの流行も、フォアグラ生産の将来に影を落とす。世界最大の産地フランスでは、フォアグラ向け農場での殺処分が深刻だ。
果たして、フォアグラは本当に“残虐な食べ物”なのか。そして、我々が今後もフォアグラを食べ続けるには一体どうすれば良いのだろうか。
なぜフォアグラは批判されているのか?
そもそも、なぜフォアグラは「残虐な食品」として批判されるのだろうか。
フォアグラはどう生産されているのか?
フォアグラはアヒルやガチョウの肝臓だが、脂をたっぷりと蓄えた独特な食感と風味が特徴だ。
そのため、フォアグラを生産するためにはアヒルやガチョウに大量のエサを与え、脂肪を体に蓄えさせなくてはならいない。そして、このエサを与える(給餌する)方法こそが批判を受ける要因だ。
フォアグラ生産では、フランス語で「ガバージュ」と呼ばれる方法で給餌がされる。これは、鳥の口にストロー状の細長いホースを挿入し、トウモロコシを主体としたカロリーの高い飼料を与えるものだ。ここでは鳥の選択に関係なく、人間によって強制的にエサが与えられる。そのため、ガバージュは「強制給餌」とも呼ばれている。
なお、強制給餌は幼鳥の頃から行われるわけではない。強制給餌が行われるのは、出荷前の数週間だ。アヒルの場合は2週間ほど、ガチョウの場合は3週間ほどとされる。
また、1回にかかる時間は2秒から3秒ほどのケースが多い。給餌の回数は鳥が消化不良を起こさないように調整されており、通常はアヒルで1日に2回、ガチョウで1日に3回おこなわれる。
この結果、アヒルやガチョウの肝臓に脂肪が蓄積されフォアグラが生まれる。だが、この集中的な摂食と肝臓での栄養蓄積は、渡り鳥に備わる本来の習性でもある。渡り鳥は大量のカロリーを必要とする渡りの前に、肝臓などに脂肪を蓄えて体重を増加させることがある。ガチョウの祖先であるハイイロガンや、アヒルの祖先のマガモは渡り鳥であったため、ガチョウやアヒルもこの習性を受け継いでいると考えられている。
なぜフォアグラへの批判は強まっているのか?
フォアグラ生産で慣行となっている強制給餌は、国際的に強い批判の的となっている。背景には、世界的に普及しているアニマルウェルフェア(動物福祉)と呼ばれる考え方がある。