⏩ 日本ではコオロギラーメン、世界でもコオロギパンなどが販売
⏩ 飼料としての有用性も高い
一方、昆虫食をめぐっては賛否も
⏩ 少ないエサで育ち、環境負荷が少ない等の利点
⏩ 歴史上、昆虫はほとんど家畜化されず忌避の意識も強い
昆虫食の開発に注目が集まっている。背景にあるのは、少ない環境負荷でタンパク質を生産できることへの期待感だ。
「パスコ」ブランドを展開する大手パンメーカーの敷島製パンは、コオロギパウダーを練り込んだ商品の販売を開始し、「無印良品」でもコオロギパウダーを使用したせんべいが販売されている。
昆虫食の開発は世界でも進んでいる。すでに欧州では少なくとも約60社が市場に参入し、世界全体での市場規模は3,000億円以上に達しているとの見方もある。
だが、昆虫食をめぐっては批判も多い。昆虫そのものを忌避する意見から、昆虫食の安全性に疑問を呈する意見まで、SNSなどでは批判的な声が多く上がっている。
では、なぜ昆虫食には賛否両論、様々な意見があるのか。そして、昆虫食は今後どれだけ社会のなかで広がりを見せるのだろうか。
昆虫食とは何か
昆虫食とは、その名の通り「昆虫を食べること」だが、必ずしも昆虫をその姿見のまま食べるとは限らない。
すでに紹介したパスコや無印良品の商品はコオロギをパウダー状に加工したものを材料に使用しており、他にもコオロギから出汁をとった「コオロギラーメン」を提供する飲食店もある。
なぜコオロギなのか
このように現在話題の昆虫食では、コオロギが原材料として使用されることが多い。
その大きな理由の1つが、経済性と飼育のしやすさにある。
コオロギのなかでもフタホシコオロギと呼ばれる種は、30度前後の温度を維持すれば2ヶ月に1度のペースで年中産卵する。さらに1度の産卵で産み落とす卵の数は1,000個以上と膨大で、密集した環境でも飼育が可能なため大量飼育に適している。
さらに、コオロギは雑食性でエサを選ばない。そのため、エサの確保も比較的簡単だ。
昆虫食の現状
一部の地域では昆虫食が伝統的な食文化である一方、ここ数年は世界各地で大規模な昆虫養殖とそれに伴う昆虫食開発が加速している。
日本の状況
日本において昆虫食はさほど目新しい食文化ではない。バッタ科の昆虫であるイナゴは佃煮などにして日本各地で食され、長野県などの一部地域では蜂の幼虫(はちのこ)が伝統的な食材として知られている。