⏩ EUの新デューディリ規制による情報開示、2024年から順次開始
⏩ 新規制は人権や環境の分野で幅広い情報開示を求めるもの
⏩ 日本企業でも連結ベースの情報開示が求められる可能性
EUの人権・環境デューディリジェンス規制が、日本企業にも大きな影響を与えようとしている。
デューディリジェンス(Due diligence)とは本来、「自分自身の財産などを守るためにとるべき合理的な行動」を意味するが、最近では企業が事業活動にともなうリスクを特定し、それらを防止・軽減すると同時に、対処方針について説明責任を果たすことを指す概念として浸透している。
特に近年、日本を含めた各国で注目が集まっているのが、人権問題に関する企業のデューディリジェンスだ。旧ジャニーズ事務所をめぐる性加害問題でも、性加害疑惑がありながら同事務所との取引を続けてきた大手メディアなどによる「人権デューディリジェンスの怠慢」が指摘されている。
欧米ではすでに、企業に人権デューディリジェンスを求める法制度の整備が進んでいるが、なかでも世界に先んじて、企業による包括的なデューディリジェンスの義務化を進めてきたのが EU だ。EU では2014年から、従業員数が500人を超える上場企業などに対して、人権のみならず環境分野などについてもデューディリジェンスの実施を求めてきた。
そして2024年から、EUにおける人権・環境デューディリジェンスの規制は、さらに強化される。2023年1月に施行された企業持続可能性情報開示指令(CSRD:Corporate Sustainability Reporting Directive)による企業の情報開示が、2024会計年度から順次始まるためだ(*1)。
この新規制では対象となる企業が大幅に拡大され、欧州に支社や子会社をもつ日本企業も規制対象となる可能性が高い。
では、日本を含めた世界各地の企業に影響を与えるEUの新たな規制とは、一体どのようなものなのか。そして、今後同様の規制が日本でも誕生する可能性はあるのだろうか。
(*1)EUで定められる規制(EU法)にはいくつかの種類があり、加盟国の国内法と同等の効力を持つ「規則(Regulation)」のほかに、「指令(Directive)」と呼ばれるものなどがある。指令が定められた場合、加盟国には指令の内容を実現するための国内法を整備することが求められる。
EUの人権・環境デューディリ規制とは
新規制である CSRD の最大の特徴は、従来の人権・環境デューディリに比べて、情報開示の対象となる企業の数が大きく増えることにある。