⏩ 日本では20代の飲酒習慣率が、20年で半減。ストロング系チューハイから撤退の動きも
⏩ 米国では大麻などが代替嗜好品として注目
⏩ 世界のノンアル飲料市場規模、100億ドルを突破
2024年1月、アサヒビールはアルコール度数の高いストロング系チューハイ販売の大幅縮小を発表した。同様の方針はサッポロビールも打ち出しており、ストロング系飲料からの撤退が業界の大きな潮流となりつつある。
この背景にあるのは、Z世代を中心として世界的に進むアルコール離れ現象だ。
たとえば、米国ではZ世代の1人あたり飲酒量がミレニアム世代と比べて約20%少ないという調査結果が報告されており、この傾向は日本でも同様だ。日本における20代の飲酒習慣率は過去20年間で約20%から約10%に半減し、2019年時点での20代の飲酒習慣率は30代の半分以下となっている(*1)。
欧米ではアルコール離れの影響が、大企業の職場環境のあり方にまで及んでいる。欧米の一部企業、とりわけテック企業では「くつろいだ職場環境」のイメージを演出する狙いなどから、オフィスでのアルコール提供が行われきた。たとえば、Twitter社(現X社)は、米・サンフランシスコの本社オフィスでビールやワインを従業員に無料で提供していたことで知られる。しかし近年、テック企業でも「オフィスでの飲酒禁止」を掲げる動きが広がっており、現在までにUber社やSalesforce社などがこうした社内規則を打ち出している。
こうしたアルコール離れの結果、欧米ではソバーキュリアス(Sober Curious)と呼ばれる新たな飲酒文化が形成されつつある。soberは「シラフ」、curiousは「好奇心が強い」を意味し、直訳すると「好奇心からのシラフ」となるが、意訳すれば「アルコールは飲めるけれど、あえてシラフでいる」というニュアンスが近い。これは単なる禁酒の概念とは異なり、「飲酒をするかどうか」を検討した結果として飲酒することを否定しない(*2)。そのため、従来の禁酒の概念よりも受け入れられやすく、アルコール離れを求める若年層などから支持を集める文化となっている。
では、なぜ若年層を中心にアルコール離れが進んでいるのか。そして、この現象はどのような影響をもたらすのだろうか(*2)。
(*1)飲酒習慣率とは、週に3日以上飲酒する「習慣飲酒」をする人の割合を指す。
(*2)本記事では「アルコール離れ」を「飲酒習慣の低下」と定義し、少子高齢化などの人口動態変化による酒類市場の縮小については扱わない。
なぜアルコール離れが進んでいるのか
世界的にアルコール離れが進んでいる背景には、大きく(1)飲酒にともなうリスクの回避、(2)社交環境の変化、(3)経済的な事情、(4)代替嗜好品の台頭といった要因がある。