⏩ 韓国と北朝鮮の混同をIOCが謝罪
⏩ 開会式は最後の晩餐のパロディでキリスト教を侮辱?
⏩ マリー・アントワネットの演出や LVMH の存在も批判の的に
2024年7月26日(現地時間)、パリオリンピックの開会式が開かれた。大会は、開会前から批判されていたが、実際に開会式の内容にも非難の声があがり、IOC や組織委員会が謝罪に追い込まれている。
ドラァグクイーンやトランスジェンダーのモデルなどが登場した場面は特に反発を受け、極右政治家や彼らに親和的な起業家などから、「あからさまな異教と悪魔の象徴」とさえ言われた。オリンピックの式典にドラァグクイーンが参加するのは初めてではなく、2000年のシドニー大会閉会式で、46人のドラァグクイーンがパフォーマンスを披露したことがある。
当該場面は、北アフリカのモロッコやアメリカの一部テレビ局で放送されず、ルーブル美術館の映像や広告などが流された。
その他、謝罪には至っていないものの、論争を巻き起こした内容も複数あり、物議を醸している。オリンピックの開会式は、なぜ論争を巻き起こしているのだろうか。
2つの謝罪
開会式について、IOC と大会組織委員会がそれぞれ謝罪をしている。ポイントは大きく2つあり、(1)韓国と北朝鮮の混同(2)宗教問題だ。
1. 韓国と北朝鮮の混同
1つ目のポイントとして、韓国と北朝鮮の混同があげられる。
開会式本番において、出場国はフランス語と英語でそれぞれ国名を紹介される。そして韓国の入場時、その名前が Democratic People's Republic of Korea(英語で北朝鮮)と紹介された(*1)。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は翌早朝の記者会見で「心からお詫び申し上げます。運営上のミスがありました。多くのことが動く夜にこのようなミスが起きたことをお詫びすることしかできません」と述べた(太字は引用者による、以下同様)。
28日には、IOC のトーマス・バッハ会長が韓国の尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領と電話会談をおこなって謝罪するとともに、IOC が文書でも謝罪を表明した。
オリンピック関係者が両国を混同したのは今回が初めてではない。2012年のロンドンオリンピックでは、北朝鮮とコロンビアの女子サッカーの試合前、主催者が誤って韓国の国旗を掲揚し、試合開始が1時間以上遅れたことがある。
(*1)放送映像の字幕では、正しい表記がされていた。
2. 宗教的理由
2つ目は、宗教的理由だ。開会式におけるパフォーマンスについて、複数の宗教団体が批判を浴びせた。
問題となったシーンは、ドラァグクイーンやトランスジェンダーのモデル、全身を青く塗った半裸の男性など18人のパフォーマーが登場した場面だ。これが、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画《最後の晩餐》のパロディであり、キリスト教を侮辱するものだと一部から批判された。
フランス司教協議会は声明を発表し、「感動にあふれ、世界から称賛される」開会式だったとした一方で、「残念ながら、この式典にはキリスト教に対する嘲笑や侮辱の場面も含まれており、私たちは深く遺憾に思います」と続けた。
最後の晩餐(Leonardo da Vinci, Public domain)
この他、エジプト最大のキリスト教宗派であるコプト教会やイスラム長老評議会などからも批判の声があがった。イスラム長老評議会は「宗教的シンボル、信仰、聖なる人物を貶めるあらゆる試みを断固として拒否」すると述べ、宗派を問わずに批判の対象になるとしている。
各国の政治家や起業家も非難に加わった。フランスの極右政治家マリオン・マレシャル氏は、「侮辱されたと感じている世界中のキリスト教徒の皆さん、これを話しているのはフランスではなく、どんな挑発にもいつでも準備ができている左翼少数派であることを知っておいてください」と投稿した。イーロン・マスク氏も、「キリスト教徒に対して極めて無礼」だと X に投稿している。
アメリカの通信大手・C Spire は、「パリオリンピックの開会式で最後の晩餐が嘲笑されたことに私たちは衝撃を受けました」と述べて、「オリンピックから広告を撤回します」と表明した。
謝罪
こうした批判を受ける形で、大会組織側は謝罪に追い込まれた。