An artist’s illustration of artificial intelligence (AI)(Google DeepMind, Unsplash) , Illustration by The HEADLINE

AI の最前線で何が進化しているのか?=検索の終わり、ビジネスモデルの転換も

公開日 2025年02月14日 10:19,

更新日 2025年02月14日 10:33,

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この記事のまとめ
💡AI の進化、次のフェーズへ移行

⏩ 中国と欧州からアメリカ=AIの王様というナラティブに挑戦状
⏩ 迫られるビジネスモデルの転換、サム・アルトマンも「OpenAIは間違えた」と発言
⏩ 検索(search)から研究(research)へ

世界の AI 競争は新たな段階に入り、AI の導入をめぐって一喜一憂する段階は過ぎ去った。

1月下旬、中国発の AI スタートアップ・DeepSeek(深度求索)が、従来より低いコストで最先端性能に匹敵する AI モデルを公開し、世界で動揺が広がっている

当初、業界ウォッチャーの間では、数字が誇張されているなどと懐疑的な声が聞かれた。しかし、ソースが公開されている(オープンソース)モデルだったことから、研究者たちが詳細を調べると、懐疑は不安に変わった。数字が改ざんされたり、中国政府のプロパガンダだと信じるに足る証拠は、今のところ見つかっていない。

そして、アメリカの App Store で、DeepSeek のモバイルアプリが ChatGPT を抜いて1位を獲得すると、市場は大パニックに陥った。アメリカのハイテク株は軒並み急落し、特に Nvidia の時価総額は、1日で約6,000億ドル(約90兆円)下落した。これは、1日あたりの下落幅としては過去最大だった。

冷戦期にソ連が宇宙開発でアメリカを一時リードした経緯を踏まえ、DeepSeek の躍進を「スプートニク・モーメント」と呼ぶ人もいる。ただ後述するように、DeepSeek がアメリカのモデルを超えたとまでは考えられておらず、端的に言えば、スプートニクの喩えは誇張だろう。

さらに、宇宙開発競争の歴史は、その後アメリカによる勝利として描かれている。ソ連がスプートニクの打ち上げに成功した後、アメリカがアポロ計画によって、人類初の有人月面着陸を達成した。

その意味で、2月2日に OpenAI が発表した最新機能・deep research は、アメリカから繰り出されたカウンターパンチだ。ただ数日後には、ヨーロッパから OpenAI の優位性が揺らいでいると示唆する発表もなされた。

ここ数ヶ月の動きは、AI 競争の潮目が変わり始めたことを示唆している。今、AI 競争の最前線で何が変化しており、今後どう展開していくのだろうか。

何が変わっているのか?

現在、AI 業界の前線で生じている変化は、大きく3つの視点から理解できる。具体的には、(1)アメリカ=AI の王様というナラティブへの挑戦(2)ビッグテックの独壇場という認識の変容(3)検索(search)から研究(research)への変化だ。

1. アメリカ=AI の王様というナラティブへの挑戦

第1に、アメリカが AI の王様であるというナラティブに対する挑戦があげられる。

中国発の AI スタートアップ・DeepSeek は、2024年12月にチャットボット・DeepSeek-V3 を発表し、1月20日には推論をおこなうモデル・DeepSeek-R1 を公開した。これは、最先端チップを使わずに、効率よくモデルを開発し、より低コストで最新モデルに匹敵するパフォーマンスを発揮できると言われる。

DeepSeek の梁文鋒(Liang Wenfeng)CEO

注目すべきは、DeepSeek の新作がリリースされたタイミングだ。1月20日は、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任と同タイミングであり、AI における米国の優位性への挑戦を意味していたと言える。トランプは、この瞬間を「警鐘」と表現しており、警戒感を募らせている

OpenAI は推論をおこなう AI モデル・o1 を最初に発表した企業だったが、DeepSeek が同様のモデルを完全なオープンソースで発表したことが衝撃を与えた。さらに、チャットボットの思考プロセスが可視化されたのも初めてだった(皮肉なことに、天安門事件に回答しないため、モデルに対する中国政府の検閲も可視化されている)。

可視化された思考プロセス

現在、米中間のマッチレースという様相を呈しているものの、欧州からも DeepSeek を追い風とする企業が存在感を発揮しつつある。フランスの Mistral AI は、OpenAI や Anthropic の影に隠れているものの、2月6日にはオープンソースモデル・Le Chat が世界最速の推論機能を備えたと発表した。

OpenAI の新ライバル、Mistral AI とは?Microsoft と連携で裏切り者の烙印も
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いずれにせよ、DeepSeek とその台頭を好意的に見る Mistral AI は、アメリカ=AI の王様というナラティブに挑戦状を突きつけている。

DeepSeek の結果は誇張なのか?

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✍🏻 著者
シニアリサーチャー
早稲田大学政治学研究科修士課程修了。関心領域は、政治哲学・西洋政治思想史・倫理学など。
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