年明けから全国的な電力需要の逼迫が生じており、危機感が強まっている。東京電力ホールディングス株式会社らが、今月10日と12日の2回に渡って照明や電気機器の使用を控えるなど「電気の効率的な使用」を求めた他、電気の需給状況の悪化予想に伴って各電力会社に求められた電力の融通回数は、異例の増加を見せている。
菅首相が、2050年までのカーボンニュートラルを宣言する中、「脱炭素の前途に控える課題を浮き彫りにした」とも指摘されており、電力やエネルギーのあり方に懸念が高まっている状況だ。
いったい日本で何が起きており、なぜ電力不足・価格高騰が生じているのだろうか?
何が起きている?
まず現状で起きていることは、大きく2つだ。
- 昨年末からの断続的な寒波などにより電力需給が逼迫
- 日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット価格が高騰
本誌の「今日知っておきたいニュース」でも昨年から報じていたように、北海道でマイナス32.6度を記録するなど、昨年末から年明けにかけて記録的な寒波が続いていた。1月の中旬から後半にかけては、例年よりも高い気温か平年通りと予想されているものの、1月前半は全国的に寒さが強まった。
こうした中で生じたのが、電力需要の逼迫だ。主要メディアの中で、最初にこの問題を報じたのは2021年01月06日の時事通信だった。
それによれば、東京電力ホールディングスの送配電子会社である東京電力パワーグリッドが、複数企業に対して電力の融通を要請していることが記された上で、「東電は2011年の東日本大震災の直後にも企業から電力を調達したことがあるが、東電PGを設立した15年4月以降では例がない」とされる。
しかし実際には、2020年末の時点から電力の融通が必要となりはじめていた。一体、何が起きていたのか?
日本の電力会社
電力の融通について理解するためには、日本の電力会社について説明しておく必要がある。
もともと日本には、東京電力や九州電力、東北電力などの民営の電力会社が地域ごとに合計10社あり、一般電気事業者として独占的に電気を一般家庭などに販売・送電していた。しかし2016年、電力の小売り全面自由化が実施されたことで、この仕組が大きく変更された。
具体的には、一般電気事業者が全ておこなっていた発電・送配電・小売り(販売)の業務は、それぞれ異なる規制が課されている(下記図)。例えば一般電気事業者だった東京電力は、以下の3社に分割されて、それぞれの業務を行っている。
① 発電事業者 = 東京電力フュエル&パワー
② 一般送配電事業者 = 東京電力パワーグリッド
③ 小売電気事業者 = 東京電力エナジーパートナー
日本の電力会社(筆者作成)
このうち、一般の需要に応じて電気を供給する③小売電気事業者には、多数の参入があり、2020年12月28日現在で計698が存在している。
一般家庭の消費者は、③小売電気事業者と契約するものの、実際に送配電ネットワークを介して送配電を行うのは、②一般送配電事業者だ。②一般送配電事業者は、中立の立場で全ての発電事業者・小売電気事業者に対して、公平に送配電サービスを提供する必要があり、旧「一般電気事業者」の10社から派生した企業が、地域ごとにサービスを提供している。
電力の融通とは
電力の融通を行なっているのも、②一般送配電事業者だ。電気の安定供給は社会にとって必要不可欠であり、②一般送配電事業者は、ある地域で電力が不足した場合は、全国を連携する送電線を通じて、それぞれ融通しあうことが義務付けられている。
融通の指示は、電気事業法に基づいて設置された電力広域的運営推進機関という機関によっておこなわれる。たとえば1月14日には、電力の不足が懸念される関西電力送配電に対して、中部電力パワーグリッドから12-16時の間に、最大74万kWの電気を供給することことが、同機関によって指示されている。