1月末、コンピュータゲーム小売店のGameStop社の株価が高騰し、メルビン・キャピタルやシトロン・キャピタルなどのヘッジファンドが損失を被った。背景には、米・大手掲示板Redditのコミュニティー「WallStreetBets」や、株取引アプリRobinhoodに集まった個人投資家の存在がある。
Robinhoodの利用者は、Robinhooder(ロビンフッダー)と呼ばれ、最近の株高や個人投資家による新たな投資スタイルを象徴する存在として注目を集めている。
Robinhoodは、どのようなサービスなのだろうか?そして、Robinhooderはどのような意味を持っているのだろうか?
Robinhoodとは
Robinhoodは、2013年にベイジュ・バットとブラッド・テネフによって設立された株取引アプリだ。翌2014年2月からベータ版のテストを開始し、その年の12月からAppStoreに登場した。同サービスは現在、1300万人のユーザーを抱えていると主張している。
2人の創業者
現在、最も注目されるサービスを生み出した2人の創業者は、ともにスタンフォード大出身の若き起業家だ。
バットは、1984年生まれの現在37歳。スタンフォード大学で物理学の学士号を取得した後、2008年には数学の修士号を取得した。インドで生まれた第1世代の米国人で、2020年までは共同CEOを務めていた。企業の成長にともない、共同CEOによる非効率性が懸念されたことから、CEOの座をテネフ1人に譲ったものの、現在でも取締役および共同創業者として同社を牽引している。
ベイジュ・バット(TechCrunch, CC BY 2.0)
テネフCEOは、ブルガリア生まれの米国人で、バットと同世代だ。スタンフォード大学で数学の学士号を取得していた際に2人は出会い、博士号のためにカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に移ったものの、事業に専念するため中退している。
ブラッド・テネフ(TechCrunch, CC BY 2.0)
2人はRobinhoodをつくる以前から、共に起業していた。最初に2人が取り組んだのはCelerisと呼ばれるアルゴリズムを用いた株式取引のサービスで、その後は、大手投資銀行向けにスイングトレード(数日から数週間単位で銘柄を変える投資手法)用のソフトウェアを開発していた。数式を得意とする2人は、そのアルゴリズムの知見を活かして金融分野に参入しようと試みた。
PaypalからStripeまで、ウォール・ストリート出身者ではない起業家が金融領域に参入するケースは、シリコンバレーの歴史では珍しくないものの、決して容易ではなかった。いずれの企業も成功することはなかったが、次に2人が構想したのが、「金融市場の民主化」だ。
しかし社会現象にまでなったRobinhoodのアイデアは、当初多くのVCから否定的に見られた。
Robinhoodの誕生
2人の創業者は、2011年に起きた「ウォール・ストリートを占拠せよ」運動から影響を受けて、「金融市場を民主化する」ために、手数料無料でスマホに最適化されたサービスが必要だと考えた。しかし当初構想されていたのは、現在のサービスとは異なる形の製品だった。
2013年4月、創業者2人は現在残っていないブログで、挑発的なメッセージを記している。