17日、同性同士の結婚が認められないのは「法の下の平等」や「婚姻の自由」などを保障した憲法に違反するとして、北海道内で3組の同性カップルが国を訴えた裁判で、札幌地裁は初めて「違憲」判決を下した。「14条への違憲性を認めたことに原告団からは喜びの声」があがったものの、G7で日本のみが同性婚に関する法的保障がない状況には変わりない。
同性婚が未だに認められていない日本では、日本で同性同士の関係を証明するには、いわゆるパートナーシップ制度を利用することになる。パートナーシップ制度によって「同性カップルを夫婦と同等の関係と考える意識は広がりつつあるが、同性婚の議論は進んでいない」現状がある。
そもそも同性婚とパートナーシップ制度とは何が違うのだろうか?パートナーシップ制度がどのような制度であり、その意義と限界はなんだろうか。
パートナーシップ制度設立の経緯
2015年11月、渋谷区は戸籍上同性同士のカップルを結婚に相当する関係として認める「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」、いわゆるパートナーシップ条例を日本で初めて施行した。
2012年、証明書の提案
2012年、当時渋谷区議員であった長谷部健が、同性間カップルの関係を認める証明書を出すことを提案した。長谷部は、トランスジェンダー当事者でLGBTQ活動家としても活動している杉山文野との出会いによってパートナーシップ制度を思い付き、制度設立へと動き出す。
当時、まだLGBTQなど性的マイノリティに対しての理解度は社会的に低く、当時の区長や他の議員もこうした制度には聞く耳を持たなかった。そこで長谷部は、同性婚やパートナーシップ制度について「国際都市のトレンド」と説明し、LGBTQの人権問題としてではなく、国際的に広がっているトレンドとして紹介することで制度実現を目指した。
2015年、可決
その後、2013年に「渋谷区多様性社会推進条例制定検討会」が発足し、LGBTQ問題やパートナーシップ制度についての議論が渋谷区で始まった。議論は2年ほど続き、2015年3月に可決され、同年10月より制度が開始された。
このパートナーシップ制度の意義として渋谷区長(当時)の桑原敏武は、住宅の入居時や医療現場等でパートナーとして認められ手続きが滞り無く進められるという点に加えて、この証明自体が性的マイノリティへの存在を可視化し、区民や事業者にとって意識改革の契機となるものだと述べている。
パートナーシップ制度を取り入れている自治体
2015年11月5日、渋谷区が「パートナーシップ証明書」の発行をはじめたことは大きく報道され、同日には世田谷区でも同様の取り組みが開始された。これを皮切りに、パートナーシップ制度は日本各地の自治体に広まり続けている。
2021年3月現在、パートナーシップ制度を導入している自治体は全部で78自治体あり、福岡市や札幌市をはじめとした人口100万人を超える市区町村も多く導入している。大阪府や茨城県など都道府県単位でパートナーシップ制度を導入している自治体も存在する。
パートナーシップ制度を検討している自治体も多く、年を追うごとに制度を導入する自治体は増えていく見込みだ。
パートナーシップ制度の種類
パートナーシップ制度は各自治体で統一された仕組みではなく、自治体によって内実は様々である。そのなかで、最初に施行された渋谷区と世田谷区の制度パターンから、各自治体のパートナーシップ制度は大きく「渋谷型」と「世田谷型」に分けることができる。