2022年がスタートした。昨年は、2020年に続いて新型コロナウイルスによるパンデミックが世界中を苦しめ、日本でも緊急事態宣言が繰り返されたが、ワクチン接種の加速によって終息も見えはじめた。
政治的には、米・バイデン政権や岸田政権の誕生、ドイツ・メルケル政権の終焉の他にも、ミャンマーやアフガニスタンで情勢の不安定化が進んだ。経済はコロナ禍からの回復が期待されたが、その反面インフレ懸念が拡大して、現在まで継続している。日本では東京五輪が開催されたが、関係者の過去の言動が問題化されるなど、人権やマイノリティの問題にも関心が高まった1年であった。
では、2022年はどのような年になるのだろうか?政治・経済はもちろん、ビジネスやテクノロジー、社会などで生じる出来事を概観しつつ、変化を予測していく。
政治 - 選挙の年
2022年は、世界的に「選挙の年」と呼ばれている。日本では、夏に参議院選挙がおこなわれる予定だが、国外でも大きな選挙が相次いで控えているためだ。
アメリカリスクを占う中間選挙
まず米国では、秋に中間選挙がおこなわれる。4年間にわたる大統領任期の中間におこなわれる選挙であり、バイデン政権への評価と2年後の大統領選挙の行方が見えてくる。バイデン大統領の支持率は低く、野党・共和党が大きく勝利する可能性が指摘されている。
中間選挙で与党・民主党が敗北した場合、トランプ前大統領が2年後の大統領選挙に再登場する可能性も示唆されている。慶応義塾大学の中山俊宏教授は、トランプ前大統領が2年後に勝利して政権交代が起こる「アメリカリスク」に警鐘を鳴らしているが、その未来を予測する上で、中間選挙は重要なイベントとなる。
リーダー不在の欧州
欧州では、2021年にメルケル首相が退任したことで、16年にわたって欧州全体を率いたリーダーが不在となった。大国ドイツは、早速ロシアとの天然ガスをめぐる交渉に苦慮しており、強いリーダーシップが失われていく懸念が強い。
リスクを増大させる可能性があるのが、フランスとイタリアの政治情勢だ。フランスでは、極右の大統領候補であるエリック・ゼムール氏が、4月に予定される大統領選挙にむけて注目を集めている。ゼムール氏の出馬は、右派候補のマリーヌ・ル・ペン氏との票割れをもたらすため、現職のエマニュエル・マクロン大統領にとって有利に働くとも言われるが、右派勢力の伸張による反移民など排外主義の高まりが、国内に混乱をもたらす可能性も高い。
イタリアでは、欧州中央銀行(ECB)総裁を務めたマリオ・ドラギ氏が昨年2月から首相に就任しており、長らく政治・経済的に脆弱化していた同国を立て直している。しかし同氏は、より長い任期(7年)を保持できる大統領に転身する可能性も示唆しており、その場合は政局が混乱する可能性も指摘されている。
欧州は、インフレ率が比較的早く落ち着き、力強い経済成長を取り戻すことが予想されているが、各国の政治的混乱が続けば、移民やロシアとの関係など地政学的リスクが経済成長の足を引っ張ることになるかもしれない。
日本は短命政権に戻るか
日本の参議院選挙は、岸田文雄首相が長期政権を築けるかの試金石となる。短命政権が続いた日本にとって安倍政権は歴史的な長期政権となったが、後任となった菅首相はわずか1年で退任した。国民や市場は、再び日本のリーダーが短期間で交代するシナリオを懸念しており、参院選で自民党が敗北した場合は、それが現実的となる。
岸田政権は、昨年の衆議院選挙では自民党単独での「絶対安定多数」を実現し、発足当初から3ヶ月間で異例の支持率上昇となっており、現状も高い水準で推移している。とはいえ、18歳以下への10万円相当の給付をめぐる方針転換や、金融所得課税をめぐる姿勢の変化などは一部で批判も集めており、オミクロン株の広がりによっては支持率に変化が出てくる可能性もある。
共産党大会後の中国
選挙ではないものの、中国では5年に1度となる共産党全国代表大会が開催される。習近平国家主席の異例となる3期目続投が確実視されており、2022年は政治や経済の「安定性」を重視していると言われる。
ただし、後述する香港や新疆ウイグル自治区をめぐる問題はもちろん、不透明な米中関係や各産業への締め付けなどが顕在化する中、中国の政治的不安は残されたままだ。
他にも韓国やオーストラリアなどで国政選挙が予定されており、日韓関係や豪中関係などにも影響をもたらすだろう。
経済 - 景気回復・インフレ・暗号資産
2022年の世界経済にとって、最も大きなリスクは昨年に引き続いてインフレ問題だが、経済成長そのものの見通しは決して暗いわけではない。