23日、岸田首相はバイデン大統領が主導する新しい経済構想「IPEF(アイペフ)」に参加することを表明した。IPEFとは、米・バイデン大統領が打ち出した「インド太平洋経済枠組み」(Indo Pacific Economic Framework)の略称であり、新たな経済的パートナーシップ構想だ。
日本をはじめ、韓国やオーストラリア、ニュージーランドといったインド太平洋地域を対象とする予定で、同地域で経済的プレゼンスを強める中国に対抗する狙いがある。立ち上げ協議には、韓国やオーストラリア、日本、インドなど13か国(*1)が参加すると発表されている。
日本などが参加する経済的な枠組みとしては環太平洋パートナーシップ(TPP)や地域包括的経済連携(RCEP)協定があるが、なぜ新たにIPEFが登場したのだろうか?
そもそもIPEFとは何であり、なぜ米国はTPPに代わって推進しようとしているのだろうか?そして、日本にはどのような影響があるのだろうか。
(*1)米国に加えた、韓国、オーストラリア、ブルネイ、インド、インドネシア、日本、マレーシア、ニュージーランド、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
IPEFの目的は?
IPEFの構想が最初に発表されたのは、2021年に開催された第16回東アジア首脳会議(EAS)だ。就任直後の米大統領による演説が慣例となっている同サミットで、バイデン大統領は新たな経済的パートナーシップの構想を表明した。
経済的プレゼンスを増す中国
ここで想定されたIPEFの主眼は、近年経済的プレゼンスを増す中国への対抗にあった。
目下、インド太平洋地域の経済活動において、中国の影響力は増大している。「一帯一路」を政策として掲げる中国は、日本を含むアジア14カ国とRCEP協定を結び、2022年から発効されている。加えて、TPPの後継として米国抜きで発効したTPP11(CPTPP)に加盟申請している他、チリ、ニュージーランド、シンガポールとのデジタル経済連携協定(DEPA)への加盟申請もおこなっている。
こうした中国の動きによって、インド太平洋地域における米国の影響力が弱まりかねない状況を懸念して、バイデン大統領は脱退したTPPの代替案としてIPEFを構想したというわけだ。バイデン大統領は「中国は最も深刻な競争相手」と述べ、インド太平洋地域における米国の経済的リーダーシップの回復を目指しているが、IPEFはその中核的戦略の1つとして位置づけられている。
ではIPEFは、TPPなど従来の経済協定とどのように異なるのだろうか?2つの点から見ていこう。