欧米各国で、サル痘(Monkeypox)の感染拡大に警戒感が高まっている。5月7日に英国で感染者が確認されて以降、ヨーロッパや北米各国でも感染の確認が相次いでいる。サル痘はアフリカ大陸で流行してきた感染症で、これまでも流行地域への渡航者の感染は世界各地で確認されてきた。
しかし、今回の流行が注目されているのは、複数の国で同時多発的に感染者が発生し、アフリカへの渡航歴がない感染者が相次いでいるためだ。また、現在の欧米での感染者の多くがゲイやバイセクシャルであることも、注目されている。後述するように、このことは新たなスティグマも生んでいる。
コロナ禍が終息しつつあるいま、注目されているサル痘とは一体どのような感染症なのか?治療薬はあるのか?そして感染者が確認されている各国は、この感染症にどう対応しているのか?
サル痘とは、どのような感染症か?
サル痘とは、サル痘ウイルスに感染することで発症する急性発疹性疾患だ。潜伏期間は7日から14日とされ、潜伏期間の後に発熱や頭痛、筋肉痛などの症状が1日から5日続く。その後、発疹が顔面などに出現し、発疹は徐々に体幹部へと広がる。こうした症状は2週間から4週間程度で治癒する。
ヒトが感染する場合はサル痘ウイルスに感染した動物に咬まれることなどが主な原因で、ヒト同士の接触が原因となることは稀だ。しかし、過去にはリネン類を介した感染が確認されており、飛沫感染や接触感染があるとされている。
致死率は?治療法はある?
サル痘による致死率は低いと考えられている。最新の研究では、致死率は0%から11%と報告されている。ただし、小児では致死率が高い傾向にあることも分かっている。
サル痘には有効な治療薬もある。その一つが、米国のSIGA Technologies社が開発したテコビリマット(Tecovirimat)という抗ウイルス薬だ。感染後に服用すれば、サル痘の症状悪化を防ぐことができる。
なおテコビリマットは、もともと生物兵器対策として米国政府の支援を受けた研究によって開発されたもので、天然痘の治療薬としても有効だ。
いまどこまで感染が広がっているのか?
サル痘はこれまで、アフリカ大陸で発生が確認されてきた。特にコンゴ民主共和国では、今年だけで1152例の感染と55の死亡例が報告されている。そしてヨーロッパなどでも、流行地域からの帰国者がサル痘ウイルスに感染していた事例が散発的に発生していた。
しかし、今回の欧米でのサル痘ウイルスの感染拡大は、これまでとは異なり流行地域への渡航歴がない人々の間で広がっている。