連日、全国各地で35度以上の猛暑日が続く中、経産省からは電力需要ひっ迫注意報が発表され、無理のない範囲での節電が呼びかけられている。
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こうした中、原発再稼働を求める声もあり、岸田首相も再稼働に向けた審査の迅速化を明言している。もともと政府は、今月7日におこなわれた関係閣僚の会合で、今夏の電力需給が「極めて厳しい状況」にあるという認識を示した上で「原子力を最大限活用する」と述べていた。
しかしながら、原発再稼働は容易く進むものではない。
たとえば5月31日、北海道電力・泊原発の安全性が争われた裁判で札幌地方裁判所は、津波対策の不備を理由として、3基ある原発全ての運転を認めない判決を言い渡した。津波対策の不備を理由に原発の運転を認めない司法判断は初めてだ。
泊原発をはじめ、なぜ一部原発は稼働を認められていないのだろうか?そもそも今どのくらいの原発が稼働中なのだろうか?そして電力不足が続く中、再稼働の迅速化は可能なのだろうか?
原発の現状
まず日本における原発の数を確認し、そのうち稼働中や廃炉中などの原発について、それぞれ整理する。
稼働中(4基)・稼働可能(6基)
2022年6月29日現在、日本に62基ある原発(もんじゅ含む)のうち、稼働しているのわずかに4基となっており、関西電力の大飯3号機、四国電力の伊方3号機、九州電力の川内1・2号機だ。それぞれ安全基準を満たし国に稼働の許可を受けている上に、定期検査期間でもない。
このほかに、定期検査中(*1)、あるいは耐震工事により一時的に停止中であるものの、稼働可能な原発は6基ある。関西原発の美浜・高浜・大飯原発、そして九州電力の玄海原発がこれにあたる。
(*1)原発は13ヶ月に1度、定期検査を受ける必要がある。
安全審査に合格済(7基)・審査中(12基)
原発が稼働するためには、原子力規制委員会の定める新規制基準(詳細は後述)を満たしているか、審査を受ける必要がある。
安全審査に合格して再稼働準備中の原発は7基あり、東京電力所管の柏崎・刈羽原発6・7号機がここに含まれる。また安全審査中、あるいは申請準備をしている原発は12基あって、うち3基が冒頭で言及した北海道電力・泊原発だ。
廃炉(25基)・建設中(1基)・その他(7基)
他に、廃炉の準備中あるいは廃炉される方針の原発が福島第一・第二原発を含めて25基存在する。一方で東電は、東通原発の1基を建設中だ。その他7基については、今後の処遇がまだ決まっていない。
なお一般的に、廃炉作業中の原発も国内に存在する原発として数えることが多い。原子炉の廃炉は完了するまでに30〜40年かかると東電は発表しており、その間も放射性物質や放射性廃棄物は生み出され続けるからだ。
震災以降の原発
原発再稼働が難しい状況の背景を理解するためには、国内全ての原発の停止につながった2011年の東日本大震災および福島第一原発事故以降の経緯を抑える必要がある。
福島第一原発事故を境として、原子力発電を取り巻く状況は大きく変化した。2010年には電力の10%が原発から供給されていたが、その割合は2014年に0%にまで落ち込んだ。その後現在にいたるまで、僅かずつではあるが再稼働が進んできた。