7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃・殺害事件以来、「宗教2世」と呼ばれる人々の抱える問題に注目が集まっている。
背景にあるのは、事件を受けて逮捕された山上徹也容疑者が、旧統一教会信者を母親に持つ宗教2世であるためだ。報道によると山上容疑者は、宗教2世として抱いていた苦悩が銃撃に至る動機であったと供述している。
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事件の背景にある、宗教2世の抱える問題とは一体何なのだろうか?
宗教2世とは誰か?
一般的に宗教2世とは、親が信仰している宗教を同じく信仰している、もしくは信仰していた2世信者を指す。
しかし山上容疑者のように、自身は宗教を信仰していなくても、親が信者であることが問題になるケースもあり、カルト宗教の問題を専門とする立正大学の西田公昭教授は「親の宗教で生活上の制約を受けてしまう子ども」を宗教2世と定義している。
日本において、宗教2世に関する問題への注目が高まったのはオウム真理教をはじめとする、カルト宗教への関心が集まった時期だった。こうしたカルト宗教を信仰する親をもつ子どもは「カルト2世」と呼ばれ、カルト宗教特有の教義によって生活に支障をきたすことに加え、カルト2世であることを理由として、差別的扱いを受ける事案も発生した。
例えば1990年代以降、親がオウム真理教の信者であることを理由に小中学校への就学を拒否される事例が日本各地で発生した。
宗教2世とカルト2世
カルト2世という形で社会の関心を集めた宗教2世にまつわる問題だが、最近ではあえてカルト2世ではなく、宗教2世という用語を使って、その問題が語られる機会が増えている。
カルト2世と宗教2世は似たような言葉だが、その含意は大きく異なる。宗教2世という言葉が指す「宗教」には、カルト以外の宗教も当然含まれる。つまり、「宗教2世問題」という概念は、カルト宗教に分類されない伝統宗教の2世信者が抱える問題にも焦点を当てているのだ。
後述するように、伝統宗教においても宗教2世の抱える問題は大きい。自身も宗教2世である京都府立大学の横道誠准教授は、宗教2世という言葉が一般的になったことで「『自分が抱えてきた生きづらい状況を初めて言語化できるようになった』という当事者が多い」と指摘する。
そのため、ここではカルト2世と宗教2世を区別した上で、より広い含意を持つ、宗教2世の語を用いて説明を進めたい。