本記事は、04月28日に公開した「なぜ急速な円安が進んでおり、消費者にどのような影響があるのか?」を大幅に加筆修正したもの。現在の文脈に合わせ修正をおこなうと共に、データなどを更新している。
今月7日、1998年8月から約24年ぶりとなる1ドル=144円台まで円安が進んだ。今年4月、20年ぶりに1ドル=130円台を突破してからも円安が止まらず、1ドル=145円に迫る状況だ。
そもそも円安とは、円と他の通貨(たとえばドル)を交換する際、ある時期に比べて1円で交換できる相対的価値が少ない状態を指す。
たとえば1万円をドルに換える際、
- 1ドル=100円ならば、100ドル(1万円/100円=100)となり、
- 1ドル=125円ならば、80ドル(1万円/125円=80)となる。
つまり1ドル=100円を基準とすると、1ドル=125円になれば交換できるドルは目減りしており「円安」状態にある。円安になると、海外から食料やエネルギーなどを輸入するコストが高まり、モノやサービスを輸入する企業だけでなく、消費者の家計にも影響を及ぼす。
なぜ、ここまで円安は加速しているのだろうか?そして、消費者にはどのような影響があり、今後どこまで続いていくのだろうか?
昨年末から続く円安傾向
2021年夏頃、1ドル=110円で推移していたドル円相場は、2021年後半にかけて1ドル=115円に近づく。その後2022年3月には、約6年ぶりに1ドル=120円を記録した。
以降は急速に円安が続いており、4月に1ドル=130円を突破してから、一時落ち着きを見せた時期もあったものの、8月中旬から再び加速。9月に入ってからは1ドル=140円を超えて、1週間で一気に145円台を伺う展開となった。
今年3月はじめには1ドル=115円だったことから、わずか半年の間に30円近く下落した形となっている。
日銀総裁など警戒感
こうした事態に対して、3月時点では「基本的に円安は全体としてプラス」という見解を示していた日銀の黒田総裁も軌道修正。9日におこなわれた岸田首相と会談後に「急激な為替レートの変動は企業の経営方針を不安定にし、将来の不確実性を高めるという意味で好ましくないと思っている」と発言した。
また鈴木俊一財務相も「昨今の動きはやや変動が大きいなという思いを持ちながら、緊張感を持って相場を見ていきたい」と述べ、同省の神田真人財務官も「このような動きが継続すれば、あらゆる措置を排除せずに為替市場で必要な対応を取りたい」と踏み込んだ発言をおこなっている。
円安は良い?悪い?
そもそも円安は悪いことなのだろうか?