2021年に開催された東京五輪・パラリンピック大会(以下、東京五輪)をめぐって、東京地検特捜部は出版大手・KADOKAWA の会長・角川歴彦容疑者を贈賄容疑で逮捕した。
同大会をめぐっては、これまで KADOKAWA の元専務らが逮捕された他、紳士服大手・AOKI ホールディングスの会長・青木拡憲容疑者らが逮捕、広告大手・大広が家宅捜索を受けている。3社はいずれも、大会のスポンサーや販売協力代理店に選定されることを意図して、組織委員会理事だった高橋治之容疑者や同容疑者と関係の深い企業に、資金提供をおこなった疑い(贈賄)が持たれている。
そもそも、なぜ東京五輪をめぐって逮捕者が続出しており、今になって事件が大きく動いているのだろうか?
事件の概要
事件の概要は、以下図表の通りとなっている。大広・KADOKAWA・AOKI の3ルートを通じて、高橋容疑者に賄賂が提供された疑いが持たれており、8人の関係者が逮捕されている。
事件の概要(筆者作成)
高橋治之容疑者
事件の中核にいるのは、組織委員会理事だった高橋治之容疑者だ。高橋容疑者は、日本の「スポーツビジネスを変えた男」とも称され、長らく大手広告代理店・電通で、サッカーW杯や五輪など国際的なスポーツ大会に関与してきた。
東京五輪では、招致段階から大きな役割を果たしており、2020年には招致委員会から820万ドル(約8億9,000万円)相当の資金を受け取って、国際オリンピック委員会(IOC)委員へのロビー活動をおこなっていた。この資金をめぐっては、日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒和氏が、フランス当局の捜査対象になったことで会長を退任している。
しかし高橋容疑者によるロビー活動については、現時点までに違法性が問われることはなかった。そのため高橋容疑者は、五輪開催に至るまでスポンサー選定などを含めて、大会への影響力を発揮し続けてきた。
何が問題視?
今回の汚職事件において焦点となっているのは、3ルートを通じた資金の "有無" ではなく "趣旨" だ。計1.3億円が高橋容疑者らに渡ったことは明白であり、問題となるのは「何のための資金か」という点に絞られている。ここでキーワードとなるのが、みなし公務員とコンサル料だ。