3日午前10時までに、北朝鮮は中長距離弾頭ミサイルと推定される3発を立て続けに発射させた。北朝鮮は2日も、短距離弾道ミサイルなど推計23発を発射させており、1日のミサイル発射数としては過去最多を記録している。
また同日には、北朝鮮と韓国との境界線付近に約100発の砲撃もおこなっており、これまでにないレベルで軍事的行為を繰り返している。
一体、なぜいま北朝鮮はミサイル発射を立て続けにおこなっているのだろうか?
異常なレベルのミサイル発射
下記図からも分かるように、北朝鮮によるミサイル発射は今年に入ってから急増している。
北朝鮮が発射したミサイルの数(筆者作成)
2日の発射数などは現時点で明確になっていないため推計に留まるものの、今年に入ってから70発から80発近くが発射されている計算だ。(*1)いずれにしても、1年間の発射回数としては2019年を大きく上回り、過去最多を更新し続けている。
2011年、父・金正日の死によって最高権力者となった金正恩体制以降、ミサイルの発射数は大きく増加しており、中でも2022年に入ってからは「かつてない高い頻度でミサイル発射を執拗に繰り返し」ている状況にある。
(*1)軍事ライターのJSF氏は、11月2日以前の発射数は50発であるものの、2日の発射数は正確に把握できないと述べている。本記事では、2日に約20発、3日に3発が発射されたことから「70発から80発近く」と記した。
なぜミサイル発射?
そもそも北朝鮮がミサイルを発射させる理由については、以下の記事で説明している。
ここでは核実験とミサイル発射実験について、いずれも「ミサイルに核弾頭をつけること」を目的としており「ミサイルはあくまで核弾頭を運ぶ手段」であることを確認した。その上で、2000年代半ば以降の北朝鮮の軍事的戦略は
- 核兵器および核兵器を搭載したまま長距離飛行が可能な弾道ミサイルを開発すること
- 韓国に甚大な被害を与えることができる通常兵力を維持すること
の2つから理解されると述べ、2000年以降の核実験・ミサイル発射実験は、1つ目の「核兵器および核兵器を搭載したまま長距離飛行が可能な弾道ミサイルの開発」の枠組みにあると指摘した。
そして、一般的に流布しているミサイル発射実験の動機でもある「外交カード」論から北朝鮮の論理を理解することは不適切であり、体制維持のための「究極的な目的」だと確認する必要があるとも述べた。このことは、2014年に同国が核兵器について「他国を脅したり攻撃したりするためのものではなく、何かと交換するための交渉材料でもない」と明言していることからも分かる。
彼らは、イラクやリビアという独裁主義国家を "教訓" として「核抑止力を放棄したまま米国と関係改善すれば、政権(体制)崩壊に至る」ことを学び、金正恩体制を維持するには核抑止力の実用化が不可欠である、という論理にもとづいて行動しているのだ。
なぜミサイル発射が急増?
この点を踏まえた上で、なぜミサイル発射が急増しているのか?という問題を考えていこう。具体的には、それは以下3つの理由から理解できる。