・障害者の脱施設化を図り、分離教育を廃止するよう求めている。
・人として当たり前の権利や自由を保障する障害者権利条約に基づいて取り組みを進められるかがカギ。
9月9日、国連の障害者権利委員会は、日本における障害者の権利の状況について総括所見を発表した。8月22日、23日にスイスのジュネーブで、障害者の権利に関する条約(以下、「障害者権利条約」)に基づいて行われた審査(*1)を受けたものだ。審査は、同委員会の委員が質問し、それに日本政府の担当者が回答する形で行われた。
所見では、障害のある人の施設収容の廃止や特別支援教育の中止といった、日本の障害者施策の諸課題について改善を行うよう勧告がなされている。勧告には法的拘束力はないものの、障害者権利条約の締約国として日本政府は対応が求められる。
日本における障害者の権利は、どのような状況に置かれているのだろうか?今後権利を充実させていくためにどのような取り組みが必要なのだろうか?障害者の権利とはどのようなものか整理した上で、今回の国連勧告の内容を紐解いていく。
(*1)日本に対する対面審査は本来2020年8月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で約2年遅れての実施となった。
障害者の権利とは何か?
まず、障害者権利条約の中身を見ながら、障害者の権利とはどのようなものなのか確認する。
障害者権利条約は2006年に国連総会において採択され、2008年5月に発効した障害者に関する初めての条約だ。「私たちのことを、私たち抜きに決めないで」(”Nothing About Us Without Us”)というスローガンをもとに、障害者団体の意見も取り入れて条約の起草交渉が行われた。現在、185の国と地域が批准している。
当たり前の権利と自由を保障
障害者権利条約は、障害のある人が差別を受けることなく、自分の選んだ場所で暮らしたり、行きたいところに行ったり、働いたり学んだり、自分の意見を表明したりといった、当たり前の権利や自由を保障することを目的としている。
条約は、こうした健常者と同様の権利を実現し、障害者が「社会に完全かつ効果的に参加する」ために締約国が取るべき措置を詳しく規定している。これには、政治的権利や、教育・健康・労働・雇用に関する権利、文化的な生活・スポーツへの参加など、幅広いものが含まれている。
障害は社会によってもたらされる
一方、障害者権利条約は「障害」そのものの定義を行っていない。障害は、人の周囲にある環境や社会の仕組みによってもたらされるものだという「社会モデル」の考え方に基づいているからだ。