(注)本記事は、性的マイノリティへの差別的発言・主張を取り扱っています。
12月5日、ロシアのプーチン大統領は、同性愛に関する宣伝を禁止する「ゲイ・プロパガンダ禁止法」の改正案に署名し、同法は即日発効した。11月24日に同法はロシア議会下院を賛成397、反対および棄権0の満場一致で通過し、30日には上院も通過していた。
この法律はもともとは2013年に発効し、同性愛などを肯定的に伝える情報を子どもたちの間で流すことを禁止するものだ。今回の改正案では、この対象が未成年だけでなく国民全体に拡大された。
この法改正に対しては、ロシア国内のLGBTコミュニティや支援団体から権利や自由をさらに抑圧するものだとして大きな懸念の声があがっている。国連の人権委員会や人権高等弁務官も差別的であるとして批難している。
ロシアはなぜ今、この改正法を施行したのだろうか?また、今現在も続いているロシアによるウクライナ侵略とはどのような関係があるのだろうか?
どのような法律か?
もともと2013年に発効した「ゲイ・プロパガンダ禁止法」(*1)は、「非伝統的な性的関係に関する流布」、つまり同性間の関係を肯定的に描写したものを広めることを禁止している。
ロシア国営メディアのタス通信や、BBC、NHK、The New York Times紙などによれば、以下のような行為が規制対象となる。
- メディア、インターネット、広告、書籍、映画において、LGBTや小児性愛(*2)に関する情報や、「子どもたちに性別を変えたいと思わせる」情報の流布
- LGBTのスローガンやシンボルが描かれた商品の販売
- LGBTに関するオンライン上の議論
- LGBTに関する公共の場での活動、デモ
「プロパガンダ」を流布したとみなされ、法律に違反すると、個人は最大40万ルーブル(約87万円)、法人は最大1000万ルーブル(約2,180万円)の罰金と、最長90日間の営業停止が科される。外国人の場合は最長15日間の収監か国外追放となる。
(*1)改正法の条文はロシア議会下院のウェブページに掲載されているが、ロシア国外からのアクセスを遮断している模様。
(*2)ロシア政府は小児性愛をゲイであることと同一視しているが、国際人権NGOのヒューマンライツウォッチは誤った偏見であるとして批判している。
なぜ今、LGBT宣伝禁止法を制定したのか?
ロシアが今回、厳格な「ゲイ・プロパガンダ禁止法」改正案をしたのには、ロシアという国家の統治のあり方、権威主義体制下での抑圧、ロシアによるウクライナ侵略との関係、という3つのポイントから読み解くことが出来る。