⏩無給労働や従業員への暴行をめぐり批判
⏩オーナーは「持続可能な事業ではない」と説明
⏩同様の課題を抱える世界のレストラン業界にも影響か
世界最高のレストランが閉店する。デンマークの首都コペンハーゲンに店を構えるNoma(ノーマ)だ。
オーナーシェフのレネ・レゼピ氏は米・New York Times 紙とのインタビューのなかで、2024年末をもってノーマのレストランとしての通常営業を終了すると明らかにした。同店はその後、EC販売向けの商品開発などに専念する。
ノーマは、年ごとに世界のベストレストランを表彰する「世界のベストレストラン50」で5度の1位に輝いた、文字通り「世界最高のレストラン」だ。美食とは無縁の地とされてきた北欧のデンマークで大きな成功を収め、「新・北欧料理」という新たなジャンルを確立した存在と評される。
そのノーマがなぜ閉店を決断したのか。その背景には、ノーマを含めた「ファインダイニング」と呼ばれる高級レストラン業態が抱える長年の課題がある。
ノーマとは何か?
ノーマは、オーナーシェフであるレネ・レゼピ氏の地元・コペンハーゲンで2003年に開業した。同氏は、スペインに店を置きノーマ同様、世界最高のレストランと評された「エル・ブジ」などで勤めた経験を持つ。
レゼピ氏率いるノーマは、北欧の伝統的食文化と地元食材で構成される「新・北欧料理」(ニュー・ノルディック・キュイジーヌ)を追求した。デンマークをはじめとする北欧ではフランス料理などの外国料理が食文化の主流であった時期がある。そうしたなか、レゼピ氏は地元食文化の再評価を目指し、2004年に「ニューノルディック・フード・マニュフェスト」を発表。純粋、新鮮、倫理をキーワードに北欧の料理業界へ変革を訴えた。
「世界のベストレストラン50」で3年連続1位
ノーマによるローカルに根差した食文化の刷新運動は世界のレストラン業界にも大きな影響を及ぼし、同店は「世界のベストレストラン50」で2010年から3年連続で1位に輝いた。また、ノーマの躍進によってデンマークではノーマ出身者の独立店を中心に世界的有名店が数多く誕生し、2021年の「世界のベストレストラン50」では1位と2位をデンマーク勢が独占した。
ノーマは日本とも深い関わりを持つ。2015年にはコペンハーゲンの本店を一時休業し、約1ヶ月間、東京で期間限定営業を行った。その際もローカルの食材の価値を追求する姿勢は変わらず、牡丹海老に加える柑橘のフレーバーとして、長野県産の黒蟻を使用したことなどが大きな話題となった。
なぜノーマは批判されてきたのか?
世界的な名声を得る一方で、最近ではノーマに対する批判が高まっていた。