飛行機の環境負荷は、
⏩ CO2だけで見ると、特別高くはない
⏩ 温室効果ガス全体で見ると、自動車よりも高い
⏩ 長距離では1kmあたり排出量が少なくなる
= 利用者の感情だけではなく、規制的措置の導入も重要
フライトシェイム(Flight shame)という言葉がある。これは、その名の通り「飛行機の利用を恥じる」という意味で、日本語では「飛び恥」と訳されることもある。
この言葉は、2017年ごろにスウェーデンで誕生した。背景にあるのは、飛行機から発生する環境負荷への懸念だ。
2019年にはスウェーデン人の環境活動家、グレタ・トゥーンベリ氏が、米・ニューヨークでの国連会合に出席するために飛行機を使わずヨットで大西洋を横断。このことでフライトシェイムの概念は、一躍脚光を浴びることとなった。
すでに欧州ではフライトシェイムの概念が大きな影響力を持っている。フランスでは昨年、鉄道で2.5時間圏内の都市を結ぶ短距離国内線の運航を禁止する法案が可決され、オーストリアなどでも同様に短距離路線の運航を削減する動きが広がっている。
では、飛行機による環境負荷とは一体どの程度のものなのか。そして、果たして本当に「飛行機の利用は恥」なのだろうか。
フライトシェイムとは何か?
フライトシェイムは、2017年にスウェーデン人歌手のスタファン・リンドバーグ氏が「flygskam」(スウェーデン語)として提唱した。その後、冒頭でも触れたグレタ・トゥーンベリ氏による「大西洋横断」もあり、欧州を中心に飛行機の環境負荷への関心が高まった。
2019年10月にスイスの金融大手・UBSが欧州主要国で実施したアンケート調査では、20%以上の人が飛行機による移動の削減を検討していると回答した。なお、同時期にドイツで行われたアンケート調査では、実際に飛行機移動を削減した人が明確に増加した結果は示されておらず、「意識」と「行動」に乖離があることには注意が必要だ。
強豪サッカークラブも批判の的に
だが、環境負荷への懸念を背景に飛行機利用を制限、もしくは自主的に削減する動きは各国で広がっている。すでに触れたように、フランスやオーストリアでは短距離国内路線の運航を削減する動きが広がる。
また、昨年9月にはフライトシェイムをめぐり、仏強豪サッカークラブのパリ・サンジェルマンが大きな批判の的になった。同クラブは試合遠征のために高速鉄道で2時間ほどの距離をプライベートジェットで移動し、その様子をSNSに投稿。これに対して仏国内で批判が高まり、記者会見でこのことを問われたクリストフ・ガルティエ監督が冗談まじりに質問を笑い飛ばしたことでさらに批判が拡大した。
結果的に、スポーツ担当閣僚やパリ市長までもがガルティエ監督の対応を批判する事態となり、フライトシェイムへの関心の高さを裏付ける出来事となった。
飛行機は環境に悪いのか?
では、具体的に飛行機の利用はどれだけ環境に負荷を与えているのだろうか。