⏩ バンクシー、作品でウクライナ支援。壁画は記念切手として発売
⏩ わかりやすさで大衆に受け入れられるも、バンクシーの活動には批判も
⏩ 壁画の措置は議論の的。過去には窃盗や売却の事例
覆面アーティストとして知られるバンクシー(Banksy)は、反戦や反暴力を訴えるメッセージをたびたび発信してきた。
ウクライナの紛争地帯にも、昨年11月、ロシア侵攻を批判するような壁画が描かれた。首都キーウ周辺で、7つの壁画が見つかったのだ。バンクシーは続けてチャリティ作品を発表するなど、ウクライナを支援する姿勢を見せている。
バンクシーは戦地に壁画を描くことで、何をしようとしたのだろうか?
バンクシーとウクライナ侵攻
ウクライナ侵攻に関連して、バンクシーはまずキーウ周辺に7つの壁画を描いて話題を呼び、続いてチャリティ作品を発表してウクライナへの寄付を表明した。このバンクシーの活動は、自身の手を離れたところまで波及し、壁画のひとつが記念切手として発売された。
それぞれの出来事は、具体的にどのような内容だったのだろうか。
7つの壁画が出現
昨年11月、キーウ周辺で7つの壁画が発見された。Instagramに制作風景の動画が公開されたことによって、7つとも正式なバンクシー作品であることが明らかになった。バンクシーの新作発表は、イングランド東海岸に《A Great British Spraycation》が出現した、2021年8月以来となる。
壁画が描かれた町のひとつボロジャンカは、ウクライナの首都キーウから約50km北西にある住宅街だ。ロシアの侵攻により集合住宅が崩壊し、200人以上が行方不明になるなど、キーウ近郊では最悪の被害を受けた街の1つだ。ロシア軍が撤退した今でも、町には攻撃の爪痕が残っている。
バンクシーはその瓦礫の中に作品を制作し、Instagramに投稿した。本人は各作品についてコメントしていないが、壁画の中には明らかにロシアを揶揄するような図像もある。
最初にInstagramで発表された作品は、瓦礫の上で逆立ちのポーズをとる少女像だった。同じく大きな被害を受けた町イルピンには、首にサポーターを巻いてリボンを持つ少女像が描かれた。いずれも、新体操大国として知られるロシアを彷彿とさせる。
キーウ市内では、「Z」マークをつけた軍用トラックの作品が見つかった("6. The Missile
")。この図像では、もともとあった男性器の落書きが大砲に見立てられている。「Z」の意味には諸説あるが、ロシア軍の装備に描かれるマークであり、ウクライナ侵攻支持者のシンボルとして広まっている。
共同通信によると、これらの壁画を「ロシアに負けるな」というメッセージだと受け止め、励まされた地元住民もいるという。
ただしInstagramの投稿にはウクライナから感謝のコメントが寄せられる一方、「町を美術館にするくらいなら、家を建て替えたほうがいい」「復興のための資金集めをしてほしい」という批判的な声も挙がった。
チャリティ作品販売
壁画公開の翌月、バンクシーは新作プリントを販売し、収益の全てをウクライナ復興のために寄付すると発表した。この新作には、バンクシーの代表的なモチーフであるネズミが描かれている。プリントではあるが、仕上げに手作業が施されているため一点モノに近い。