⏩ 大阪IRの整備計画が前進、カジノへの懸念が高まる
⏩ カジノによる治安が悪化、学術研究は割れている
⏩ 今後の検証とカジノ不信のメカニズム把握が課題
今月14日、政府はカジノを含む統合型リゾート(IR)誘致に関する IR 推進本部(本部長は岸田文雄首相)で、大阪府と大阪市の整備計画を認定すると決定した。
一方、長崎県佐世保市への誘致計画については、その認定判断を見送った。資金調達先の一つであるクレディ・スイス・グループの経営不安によって、資金面での不透明さが高まったことが一因と目されている。
カジノを伴う IR 計画の推進については、犯罪やギャンブル依存症の増加に対する懸念が提起されてきた。では、カジノを含む IR の誘致によって本当に治安は悪化するのだろうか?
大阪 IR とは何か?
大阪 IR とは、大阪府・大阪市に誘致される予定の統合型リゾート(Integrated Resort)のことを指す。
「統合型」という名前の通り、カジノだけでなく国際会議場や展示場、ホテル、レストラン、ショッピングモール、エンターテイメント施設などで構成される。大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)に建設される予定で、2029年秋から冬頃の開業を目指している。設置・運営は、大阪 IR 株式会社(中核株主:合同会社日本 MGM リゾーツ、オリックス株式会社/少数株主:関西地元企業を中心とする20社)によって担われる。
大阪 IR 計画は、成長産業である観光分野を基幹産業化させ、大阪に IR を核とした国際観光拠点を形成することを目指した取り組みと謳われている。
「治安悪化」は何を意味する?
しかし、大阪 IR 計画はカジノの誘致を含むため、治安の悪化を懸念する声があがってきた。日本リサーチセンターが2017年におこなったアンケート調査によると、IR が整備されることへの印象として「ギャンブル依存症の人が増加する」と答えた人が約60%、「治安が悪化する」あるいは「犯罪が増加する」と答えた人がそれぞれ約45%いた。
このアンケートにもある通り、人々のイメージにおいても、治安の悪化と犯罪の増加はほぼ同じものとして扱われるため、ここからは「治安悪化」を犯罪増加の意味合いで用いていく。
カジノ設置は治安を悪化させるのか?
それでは、カジノを設置することで、本当に治安は悪化する、つまり犯罪は増加するのだろうか。