⏩ 1990年代初頭から来日、現在は1,200人以上が暮らす
⏩ 中小の町工場や地理的な条件のよさから埼玉南部に集住
⏩ 日本との歴史や難民認定、2世・3世にまつわる課題に直面
2023年7月上旬に埼玉県川口市で、少数民族クルド人ら約100人が市内の総合病院「川口市立医療センター」周辺に集まり、県警機動隊が出動する騒ぎとなった。産経新聞は同月30日、この混乱により、救急の受け入れが5時間以上にわたってストップしていたと報じた。
一方で、埼玉県蕨市に拠点を置く任意団体「在日クルド人とともに」は、本事件を報じた産経新聞の「クルド人殺到 おびえる市民」と題する記事について、次のように指摘した。
川口市で刺傷事件や病院前での混乱が起きたことは事実ですが、民族性と個別の事件を結び付け、恐怖と不安を煽るのは、偏見と差別を助長するものです。当事者に対する取材もなく一方的な記事です。
(略)
このような記事は、問題の解決を遠ざけ、特定の民族への排斥につながります。
クルド人は、トルコやシリア、イランなどの国境地帯に住み、世界におよそ3,600万から4,500万人いると推計され「国を持たない最大の民族」とも呼ばれる。宗教的には大多数がスンニ派ムスリムだが、シーア派ムスリムやキリスト教、ヤズィーディー教などに属する人もいる。
クルドと日本の関係は複雑だ。クルドには、100年前に日本も調印した条約によって独立国家の構想が立ち消えになった過去があり、日本クルド文化協会も政府に対して同条約からの脱退を求めている。くわえて、日本で難民に認定されたことのあるクルド人はほぼおらず、2022年8月に、トルコ国籍を持つ30代のクルド人男性が初の難民認定を受けただけだ。実際、クルド人の大半は、地理的に近接しているヨーロッパの国々を目指す。
こうした事情があるにもかかわらず、一部のクルド人は日本、特に埼玉県南部の川口市や蕨市に集まっており、現在1,200人以上のクルド人が同地域に暮らしているとされる。
なぜ、クルドの人々は埼玉県南部にやって来るのだろうか。