⏩ 当初、常温常圧での超伝導を可能にする物質でノーベル賞級の発見だとして熱狂
⏩ 論文の著者どうしが対立、1人とは連絡が取れなくなる事態も
⏩ 再現実験により当初の結果を否定する論調へ
2023年7月23日、韓国の研究チームは、超伝導と呼ばれる現象を通常の常温常圧下で実現させたとする論文を発表した。LK-99 と呼ばれる物質が、それを可能にしてくれるという。同月26日には、LK-99 が磁石の上で浮いているように見える動画が公開され、著者らは常温常圧下での超伝導を確認できたと主張した。
今回の発表は、従来、特殊な環境でしか実現できないと考えられていた超伝導を容易に実現できる可能性を見出したとして、ノーベル賞級とも言われるほどの注目を浴びているのだ。この点について Science 誌は次のように報じている。
もし本当なら、この発見は物性物理学史上最大の発見の一つとなり、あらゆる種類の技術的驚異をもたらす可能性がある。
簡単に言えば、超伝導は物質の電気抵抗がゼロになる現象を指し、今回の結果が本当であれば、エネルギー問題を解決する希望につながることから、「聖杯」と呼ばれ学術界の外でも期待が膨らんだ。
一方、発表された成果については懐疑的な見方が広がった。論文の妥当性に対して「怪しい」あるいは「ずさんだ」とする声があがり、専門家以外からも冗談や皮肉を飛ばされ、ミーム化され、「私は信じたい」(I want to believe)と書かれたTシャツまで販売された。
LK-99を「私は信じたい」と書かれたTシャツ
LK-99を使った核融合発電機を作ったというミーム動画
さらに内容の妥当性以外にも、著者間の対立や、過去の関連研究におけるスキャンダルも複合する形で、LK-99 に対して疑念が深まり、8月9日には「LK-99 のあまりに短い誇大宣伝」が終焉したと報じられた。
発表から2週間ほどで、ジェットコースターのごとく熱狂と落胆を繰り返した LK-99 とはどのような物質で、なぜ注目を浴びたのだろうか。そして、その「あまりに短い誇大宣伝」はどのような経緯で終焉へと向かったのだろうか。
LK-99とは何か
LK-99 とは、常温常圧での超伝導を実現するとされる物質だ。その特徴と革新性を理解するためには、従来の超伝導の特徴を簡単におさえておく必要がある。