⏩「宇宙に浮かぶ太陽光発電所」の実用化、発電出力は原発1基分に相当
⏩ 宇宙での組み立てや、部品輸送コストに課題
⏩ 日本政府も実証実験、民間事業者の参入も
2023年6月、米・カリフォルニア工科大学(カルテック)は、マイクロ波を使って宇宙空間から地上にエネルギーを送ることに成功したと発表した。これは、宇宙太陽光発電の実用化に向けた実験のひとつだ。
宇宙太陽光発電とは、宇宙空間にある太陽光パネルを搭載した衛星によって発電し、その電力をマイクロ波などに変換して地上に送る技術を指す。その名の通り「宇宙に浮かぶ太陽光発電所」である。近年、米国で再評価されている他、中国でも積極的に開発が進展しているが、実は1980年代以降は、日本が研究を牽引してきた分野とも言われる。
エネルギーの脱炭素化が求められるなかで、太陽光発電の重要度は大きくなっている。しかし、地上に太陽光パネルを設置する限り、夜間や悪天候の環境下では発電が難しい。一方、宇宙であれば24時間、天候を問わずに太陽光を活かして発電することが可能となる。
だが、その実用化に向けてクリアすべき課題は多い。後述のように宇宙太陽光発電では、発電をする衛星を高度3万6,000mの静止軌道上で運用することが想定されている。だが、巨大な太陽光パネルを搭載した発電衛星は宇宙空間で組み立てる必要があり、一体どうやって静止軌道まで発電衛星を打ち上げるのか、その具体的な方法はいまだ確立されていない。
では、宇宙太陽光発電とは、一体どのような仕組みで運用されるのか。そして、実用化に向けた見通しはどうなっているのか。そのメリットや課題を詳しく確認していこう。