⏩ 危機遺産指定の後、世界遺産リストから抹消されるおそれも
⏩ 原因は気候変動、オーバーツーリズム、開発プロジェクト。そこには "あるジレンマ" も…
⏩ 9月の世界遺産会議までの対策がカギ
水の都として知られるイタリア北部の都市ヴェネツィアが、世界遺産リストから抹消される危機に陥っている。
「ヴェネツィアとその潟」(*1)は、1987年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された。しかしユネスコは、7月31日に発表した文書の中で、同地の危機遺産への指定を提案した。9月にサウジアラビアのリヤドで開催される世界遺産委員会にて、イタリアを含む21カ国による投票で採決される。
危機遺産に指定されることは、何を意味するのだろうか? そして、なぜヴェネツィアは危機遺産に指定されようとしているのだろうか?
(*1)世界遺産の登録名で、ヴェネツィアの街とその周辺の潟(ラグーン)を指す。なお、ヴェネツィアは観光の中心である本島、ムラーノ島、ブラーノ島のほか、合計118の島々で構成されている。
危機遺産とは?
日本ユネスコ協会連盟によって、危機遺産は次のように説明されている。
武力紛争、自然災害、大規模工事、都市開発、観光開発、商業的密猟などにより、その顕著な普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされている世界遺産は、「危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に登録されます。 危機遺産リストに登録された場合は、国際的な協力を仰ぎ、ワールド・ヘリテジ・ファンド(世界遺産基金)への財政的支援を申請することができます。
前提として、世界遺産とは、人類共通の遺産として保護・保全していくべき有形不動産を指す。何らかの事情によってこの価値を維持できないとみなされると危機遺産に指定され、状況が改善されずに価値を失うと、世界遺産リストから抹消される。