⏩ ソフトとハードで戦争のルールを変える2人の起業家
⏩ 変化する軍産複合体、テクノ・軍事・産業・学術複合体へ
⏩ 核兵器以来の革命と言われる AI、すでに実戦投入
AI のソフトウェアを制する国家が、次の世界の規範を決める。
AI は全人類の未来だ。この分野でリーダーとなる者は世界の支配者となるだろう。
2つの文章をつなげて読んでも何の違和感もないが、それぞれ全く別の人物によって語られた別の文章だ。前者は、アメリカの AI ソフトウェア企業・Palantir のアレックス・カープCEO による2022年の発言であり、後者はロシアのウラジーミル・プーチン大統領による2017年の発言だ。
そして、2022年に始まったロシア・ウクライナ戦争と、2023年に始まったイスラエル・ハマス戦争は、世界に AI の役割の大きさを強烈に印象付けた。
火薬と核兵器に続く、戦場における第3の技術革命と呼ばれる AI だが、後述するように、その使用場面は兵器にとどまらず、戦争の質が劇的に変化したことを示している。第二次世界大戦で核兵器の開発を担ったロバート・オッペンハイマーになぞらえ、「シリコンバレーのオッペンハイマー」として AI の進化を担う中心人物たちにスポットライトが浴びせられる。
世界を混乱させている2つの戦争は、期せずして AI を活用した新しい軍事テクノロジーの「実験場」になった。AI は戦争でどう使われているのだろうか。そして AI によって、戦争はどう変わるのだろうか。前編の本記事では、戦争ビジネスに訪れた変化を概観する。
21世紀のオッペンハイマー
1945年7月16日、ロバート・オッペンハイマーがアメリカのロスアラモス研究所で開発した核兵器は、文字通り戦争のルールを変えた。広島と長崎に原爆が投下されて以来、世界は核による攻撃を経験していないが、核兵器が戦後の国際秩序において大きな役割を果たしてきたことは、その賛否を問わず、認めざるを得ないだろう。
現在、そうした秩序に地殻変動が起ころうとしている。オッペンハイマーは「我は死神なり、世界の破壊者なり」と吐露したというが、現在「シリコンバレーのオッペンハイマー」と呼ばれる者まで現れた。
彼らがそのように名指しされる最大の理由は、火薬、核兵器に続く戦場における第3の技術革新、AI の開発と利用における中心人物と考えられているからだ。ソフトウェアとハードウェアに、それぞれ業界を牽引する存在がいる。