⏩ この発言に、マスク氏が「一線を越えた」と批判も
⏩ これまでも、X におけるヘイトスピーチ対策の不備などを指摘する同団体と対立
⏩ 背景には、陰謀論と反ユダヤ主義の結びつきも
現地時間5日、X(旧 Twitter、以下すべて統一)のイーロン・マスク会長は、「はっきりと述べておきたいが、私は言論の自由を擁護するものの、いかなる種類の反ユダヤ主義に反対だ」と述べつつ、米国最大のユダヤ人団体の1つである ADL(Anti-Defamation League、名誉毀損防止同盟)を批判した。
マスク氏の主張によれば、ADL は広告主に対して圧力をかけることで X の広告収入を「60% 減少」させており、Xを「潰すことに殆ど成功してる!」という。その上でマスク氏は「皮肉にも『名誉毀損防止同盟』に対して、名誉毀損訴訟を起こさざるを得なくなる」と投稿した。
一連の発言には、すぐさま批判が集まった。たとえば Los Angeles Times 紙のマイケル ・ヒルツィク(Michael Hiltzik)氏は「マスク氏が完全に常軌を逸し、陰謀論を煽るパラノイアの限界を超えている」証左だと述べ、イェール大学のデビッド・オースティン・ウォルシュ(David Austin Walsh)研究員は、マスク氏が「一線を越えた」と指摘する。また ADL のジョナサン・グリーンブラット(Jonathan Greenblatt)CEO は、指導者が反ユダヤ主義を増幅・強化すべきではないと警鐘を鳴らした。複数の反ヘイト団体および公民権団体は、マスク氏による訴訟の脅しには怯まないとして、ソーシャルメディアにおけるヘイトスピーチへの対抗を強化すると語った。
広く知られているように、反ユダヤ主義に対する目は厳しい。それは、人類がホロコーストという「二度と繰り返してはならない」歴史を経験しているからであり、現在でも多くの人権団体などがこの問題に目を光らせているからだ。
にもかかわらず、イーロン・マスク氏はこれまでも、繰り返しユダヤ人やユダヤ人団体に対して根拠のない発言や誤解を招く言動を繰り返してきた。18日におこなわれたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相との会談では、反ユダヤ主義を強く非難することを求められたが、個人的には反ユダヤ主義に反対だとしつつも、直接明言することを避けた。
ADL をはじめとするユダヤ人団体に批判的であることは、直ちに反ユダヤ主義であることを意味する訳ではない。しかし、世界で最も裕福で影響力のある人物の1人であるマスク氏による発言が、反ユダヤ主義者や陰謀論者に向けた "犬笛" として機能する懸念は大きい。
一体なぜマスク氏は、ユダヤ人団体への対立的な姿勢を崩さないのだろうか?