⏩ 背景には、当局のグリーンウォッシュ規制強化や共和党などからの猛反発
⏩ 一方、日本や欧州ではESG投資額が増加傾向
ESG 投資が、大きな岐路に立っている。
世界持続的投資連合(Global Sustainable Investment Alliance:GSIA)が2023年11月29日に発表した報告書によると、2022年の世界のESG投資額は30.3兆ドル(約4,460兆円)となり、調査開始以来、初めてのマイナス成長となった(*1)。
主要国・地域におけるESG投資額の推移(GSIA資料より筆者作成)
各国・地域の ESG 投資額の推移で際立つのは、米国での“急ブレーキ”だ。2020年には17兆ドル(約2,480兆円)以上の規模に膨らんでいた米国での ESG 投資額は、8兆4,000億ドル(約1,428兆円)と半減した。2020年時点で米国の ESG 投資額は世界全体の半分以上を占めていたため、米国での半減が世界全体での投資額にも大きな影響を与える結果となった。
もっとも、こうした米国における数字の減退の背景には、調査手法を変更したことが大きく影響している。後述のように、米国では実態に即していない ESG 投資をグリーンウォッシュとして厳しく批判する潮流が加速しており、今回の調査でもグリーンウォッシュのおそれがある ESG ファンドは、カウントの対象から除外されている。
しかし、米国における ESG 投資の減退は、実態としても広く確認されている。ブラックロックや、ステート・ストリートなどの大手資産運用会社は相次いで ESG ファンドの閉鎖を発表しており、2023年に閉鎖された「サステナブルファンド」の数は史上最高を記録している。
では、一体なぜ世界最大のESG投資額を誇っていた米国で、このような事態が起きているのか。
(*1)GSIAの報告書は2年に1度の公表で、前回調査は2020年。
なぜ米国でESG投資が減退しているのか
米国におけるESG投資の急速な減退の背景にあると考えられているのが、(1)当局によるグリーンウォッシュ規制の強化、(2)ESG投資への政治的反発、(3)環境銘柄の株価低迷だ。