⏩ 食欲の抑制効果がある画期的な新薬が登場
⏩ 市場規模、2030年までに現在の10倍以上に拡大へ
⏩ 今年2月からは日本でも販売開始
⏩ 食品・外食産業では市場縮小への懸念など、他業界にも影響
「痩せ薬」こと、肥満症治療薬の市場に大きな注目が集まっている。肥満症治療薬は、すでに2型糖尿病患者など向けに処方されてきたが、糖尿病の疾患を持たない人の減量を目的とした新薬の販売が広がっているためである。
肥満症治療薬をめぐり注目を集めているのが、欧米の大手製薬メーカー2社の動向だ。
欧州勢では、デンマークの製薬大手・Novo Nordisk(ノボノルディスク)が「ウゴービ(Wegovy)」を開発・販売している。ウゴービは2021年6月に米国当局から肥満症治療薬として承認され、2024年2月からは日本でも販売が開始されている。
そして、2023年11月には米製薬大手・Ely Lilly(イーライリリー)も、自社で開発した新薬「ゼプバウンド(Zepbound)」について米国当局から認可を取得。この認可取得の発表直後、同社の株価は急騰し、時価総額が EV 大手・Tesla(テスラ)を上回ったことでも話題になった。
2型糖尿病患者など向けに処方されてきた肥満症治療薬の市場規模は、現在のところ世界全体で約60億ドル(約8,400億円)と推定されている。しかし、ウゴービやゼプバウンドといった新薬の登場により、その市場は2030年までに1,100億ドル(約15兆4,000億円)規模に達するとも見られている。
この肥満症治療薬市場が急成長した場合、製薬業界のみならず食品や外食業界など、関連する多くの業界にも多大な大きな影響が生じると考えられている。痩せ薬とは何であり、なぜ市場成長に期待が寄せられているのだろうか?