⏩ 設立1年足らずで大手 VC から調達、Microsoft とも契約
⏩ 米国一強の AI 市場に風穴を開ける新星として期待も
⏩ EU 当局からは「裏切り者」の烙印
フランスの AI スタートアップが、OpenAI をはじめとする米国の AI 企業に猛烈な勢いで追随している。
Mistral AI というスタートアップは、2024年2月26日(現地時間)、5か国語を扱う Mistral Large という大規模言語モデル(LLM)と、それを基盤にしたチャットボット・Le Chat(*1)を発表した。そして同日、Microsoft との複数年契約も発表し、さらなる開発の加速が示唆されている。
驚きなのは、Mistral AI が設立されてからわずか1年足らずで、Microsoft と契約できるだけの高い技術力を有していることだ。
一方で同社は、運営方針をめぐってフランスから EU を巻き込んだ政治的な論争も喚起しており、一部からは「はったり」をかました「裏切り者だ」と非難されている(太字は引用者による。以下同様)。
OpenAI の新しいライバルとして急速に台頭し、「欧州の AI チャンピオン」とも呼ばれる Mistral AI とはどんな企業であり、なぜ熱い視線を浴びているのだろうか。
(*1)フランス語で猫を意味する「ル・シャー」と同じ発音
Mistral AI とは
Mistral AI(以下、Mistral と表記)は、2023年4月にフランス・パリで設立された、従業員数十名の AI スタートアップだ(5月に法人化)。Mistral とは、「見事な」を意味する南フランスの方言であり、同地域で吹く強風を指す。
Mistral は、OpenAI や Anthropic といった AI 企業の新たな対抗馬として台頭しており、すでに投資家から高い評価を獲得している。Mistral が注目されたのは、設立わずか数週間後の2023年6月、プロダクトがないにもかかわらず、著名VC・Lightspeed Venture Partners 主導のもと、1億500万ユーロ(約160億円)を調達した。
Mistral AI(同社HPより)