⏩ 足元の日本経済、決して不況ではない
⏩ アメリカはソフトランディングに向けた材料揃うも、利下げシナリオに差
⏩ 今後の日本は実質賃金の伸び、「金利のある世界」への対応が鍵
9月上旬、日経平均株価が下落を続けている。特に、9月4日は終値で歴代5番目、今年3番目の下げ幅(1,638円70銭の値下がり)を記録した。
このニュースは、世界景気の今後および日本経済の見通しに対する警戒感が表出したという意味で重要だ(太字は筆者による、以下同様)。
足元の下落には、大きく2つのきっかけがあった。1つは、9月3日(現地時間)に公表された米国の製造業景況感指数が、市場予想に反して、好不況の基準である50を下回った(47.2だった)ことだ。
もう1つのイベントとして、9月4日、世界有数の半導体メーカー・Nvidia の株価が 9.5% 急落したことがあげられる。時価総額にして2,790億ドル(約40兆円)の消失は、1日の下落幅として過去最高だった。背景には、米司法省が同社に対して、反トラスト法違反捜査で召喚状を出したと報じられたことが関係している。
また日本株の下落には、ファンダメンタルズの変化も影響している。具体的には、日米の金利差縮小の公算が大きくなっている影響がある。日銀は3月にマイナス金利の解除(事実上の利上げ)、7月に追加の利上げを発表した一方、アメリカでは利下げが目の前に迫っていると言われる。年初から続いてきたように、低金利の円と高金利のドルの金利差が大きい局面では、円売り・ドル買いの圧力が強かったが、金利差縮小の予測から目下その圧力が弱まっている。結果として、円キャリートレードの解消などによって日本株の下落につながっているとみられる。
不安定化が見られるが、そもそも株式市場は経済の健全性を確認するための唯一の指標でもなければ、最良の指標というわけでもない。
では、現状の日米の経済指標を踏まえると、世界経済の先行きを警戒すべき状態なのだろうか。