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2024年9月19日未明、中国の広東省・深圳(深セン)市の日本人学校に通う児童(10歳)が死亡した。この生徒は、18日の午前7時55分頃、徒歩で通学途中に中国国籍の男性に刃物で刺され、同市の病院で治療を受けていた。中国外務省は、被害児童は日本人の父親と中国人の母親を持つ日本国籍者であることを確認したという。
深圳市警察の声明によれば、現場で逮捕されたのは鍾という姓の男性(44歳)だった。地元メディア・深圳特区報は、男性は無職で、公共通信施設の損壊(2015年)と治安妨害の疑い(2019年)で、2度の逮捕歴があると報じている。
深圳(Shenzhen)(OpenStreetMap, CC BY-SA 2.0)
20日、日本に住む数十人の中国人は声明を発表し、今回の襲撃は、「国家主義的で過激な反日憎悪教育」の結果であるとして、それを非難した(太字は引用者による、以下同様)。
19日、在中国日本大使館では半旗が掲げられた
一方で、アメリカ国営のラジオ放送局・VoA(Voice of America)によれば、今回の事件後、中国のソーシャルメディア・Weibo(微博)では、旧日本軍による中国への侵攻と照らし合わせたコメントが散見された。たとえば、「日本軍のブーメランが、ついに彼ら自身のもとに戻ってきた」とか「日本が中国を侵略したとき、何人の中国の子どもが亡くなった?」というものだ。
また23日には、東部の四川省・新竜県の幹部である黄如一氏が、メッセージングアプリ・WeChat(微信)のグループチャット内で「われわれの規律は、まさに日本人を殺すこと」と書いたと報じられた。
日本でも、今回の事件には反日的な感情や教育が根本にあるという見方も少なくない。ただ一方で、日中が経済的な交流を深め、留学生など民間レベルでの交流が活発なこともよく知られている。
現在、中国における反日感情は高まっているのだろうか。そして、経済的には相互関係を深めてきたにもかかわらず、両国の間で対立が絶えない原因はどこにあるのだろうか。
反日感情原因説の高まり
前提として、今回の事件について、容疑者が犯行に至った経緯や動機は現時点で明らかになっていない。
中国外務省の林剣報道官は、「深い悲しみと遺憾を表明する」と述べて事件の真相を究明するとしつつ、「どの国でも発生しうる」ような「偶発的な事件」だとも発言している。王毅(ワン・イー)共産党政治局員兼外相も、「政治問題化するのを避けるべきだ」と述べ、ヘイトクライム(憎悪犯罪)だという認識をすべきでないと示唆した。
ただ、昨今の中国における社会的な事情と事件が起きたタイミングによって、犯行の動機が日本人に対するヘイトだとする懸念が高まっている。