南アフリカで、2020年6月1日に解除されていた酒類販売の禁止措置が再び課されることとなった。
同国では3月26日深夜のロックダウン開始から、酒類とタバコの販売禁止措置が続いていたが、解除されると買い溜めをしようと人々が長蛇の列をなした。買い物の時点からマスクの着用やソーシャルディスタンスの維持を守る者はほとんどおらず、歌い踊りながら酒を飲んでパーティーをする人が続出したため、再度の禁止措置がとられる結果となった。南アフリカでは、新型コロナウイルスの感染者数が25万人を超え、すでに4000人以上出ている死者数は年末までに5万人を超えるとの試算もある。
新型コロナウイルスの感染が拡大して以降、酒にまつわる批判や禁止措置が数々見受けられる。例えば、若者たちがおこなうパーティーが問題視され、7月12日に1日の感染者数が1万5000人を超えたフロリダ州では、すでに6月下旬からバーなどでの酒類提供が禁止されている。
日本でも、接待を伴う店や酒類を提供する飲食店が多い”夜の街”が、重点的に対策されている。
酒類販売の禁止はどのような理由でおこなわれるのだろうか?また、禁止によってどのような影響が出てくるのだろうか。
世界的に見られる酒類販売の禁止
新型コロナウイルス対策としての酒類販売の禁止措置は、南アフリカに限ったことではない。例えば南アフリカと同じく3月下旬から酒類の販売を禁止していたスリランカは、4月19日の夜間外出禁止令の緩和とともに措置を解除した。しかし、わずか2日後の21日には再び禁止措置を発令し、全ての酒類販売店を閉鎖することとなった。
また、タイでは自宅でのみ飲酒可能という制限付きで、店舗での酒類販売禁止が解除された一方、外出制限によってオンラインでの酒類販売が増えた結果、未成年飲酒が増加したため、オンラインでの酒類販売が禁止されることとなった。
フィリピンでは、マニラなどがあるルソン島での検疫中にアルコールの販売禁止措置がとられ、酒類メーカーが政府に禁止解除を求めるなど、業界と政府の利害が衝突している。
欧州や中南米でも禁止措置
こうした禁止措置はアジアだけでなく、ヨーロッパや中南米にも広がっている。グリーンランドの首都ヌークでは、ロックダウン中の子どもに対するDVを減らすため、酒類販売を禁止した。またドイツのレバークーゼンでは、メーデーに伴う休日に多数の人が集まることを警戒して、公共の場での飲酒を禁止した。
メキシコではロス・カボスやカンクンなどの観光地で販売禁止やコロナビールなどの生産・流通停止などの措置がなされている。このほかにも、ボツワナ、グレナダ、コロンビア、バルバドス、ジンバブエなどで新型コロナウイルス対策の一環として酒類販売の禁止措置がとられた。
一方イギリスでは、ロックダウン中に酒類販売禁止が実施されるとの偽造公文書がSNSなどを通じて出回ったが、各国で実際に禁止措置がとられていたことがこうした誤情報の信憑性を高める結果となった。
また、国家間をまたいで移動する航空会社でも、アルコール飲料の提供を控える動きが起こっている。例えば、EasyjetとKLM(ヨーロッパ)、Delta Air LinesとAmerican Airlines(米国)、およびアジアのバージンオーストラリアを含む航空会社は、アルコール飲料の提供を全部または一部停止した。
このように、実に多くの国や地域で新型コロナウイルス対策として酒類販売禁止措置がとられている。なぜ世界のさまざまな国や地域が、酒類の販売禁止に乗り出したのだろうか?