2日未明、トランプ米大統領とメラニア夫人が、新型コロナウイルス検査で陽性だったことが明らかとなった。対立候補である民主党・バイデン前副大統領は、2度の検査でいずれも陰性だったものの、ビル・ステピエン選挙対策本部長など、ホワイトハウス関係者に複数の陽性者が見つかっており、感染拡大が懸念されている。
11月に大統領選挙が控える中、トランプ大統領の感染は、選挙戦やマーケットにどのような影響を与えるのだろうか。専門家の見解などを簡潔に整理する。
軽症なら「経済優先」に
三菱UFJ グローバルマーケット調査部門責任者のデレク・ハルペニー氏、トランプ大統領が「すぐに回復すれば、経済の早期再開がはるかに重要との主張を補強する形になる。」と述べている。同記事では、「同情票を集めたり、復活を遂げてコロナに打ち克つ姿をアピールするかもしれない」(大和証券チーフグローバルストラテジストの壁谷洋和氏)や「同情票が入る可能性もある」(AMPキャピタル投資戦略ヘッドのシェーン・オリバー氏)といった指摘も見られる。
ただし、YouGovが示すように、新型コロナウイルスに感染して支持率が急増したボリス・ジョンソン英首相は、実際には感染を公表する前から指示が集まっていた。またトランプの支持者はほぼ固定されているため、同情によって追加票が集まる可能性は低いという見方もある。「政治的指導者が新型コロナに感染することで同情票を集める」というストーリーは、あくまで神話に過ぎない。
また、トランプ大統領が早期に回復した場合、「新型コロナウイルスの脅威は誇張されている」という自らの主張を裏付ける証拠だと喧伝する可能性もある。同様のシナリオは、The Wall Street Journal紙のジェラルド・F・セイブも示唆している。
重症ならリスクオフへ
一方、トランプ大統領の症状によっては、リスクオフ(投資家がリスクを回避するため、より安全な資産に資金を動かす状況)の流れが進むという指摘もある。実際、トランプ大統領が自らの感染を明らかにして以降、ダウ先物は500ポイント以上も下落し、VIX指数(相場の先行き不安が強まったり、不確実性が高まると上昇する、恐怖指数とも)は9%急上昇した。
Prime Partnersの最高投資責任者であるフランソワ・サヴァリー氏は、「リスクオフの動きがどこまで続くかは、ホワイトハウスの感染の程度に依存する」と述べるが、既にホワイトハウス関係者にも感染は広がっている。
現職大統領のコロナ感染は、明らかな政治的・経済的リスクではあるが、それに加えて民主党のバイデン候補に有利な動きが強まることで、投資家らは警戒感を強めている。
The Wall Street Journal紙が指摘する通り、トランプ大統領のコロナ感染を受けた「マーケットのネガティブな反応は、米ウォール街にとって、共和党の勝利が総じて望ましい結果だと考えていることを示している」。投資家は、民主党政権によって「法人税の引き上げと規制強化」が進むことを懸念しており、トランプ大統領および共和党の敗北に悲観的な立場だ。
ただし、専門家の見方は必ずしも一致していない。