20日、ニューヨーク株式市場でダウ工業株30種平均が一時900ドル以上の下落をみせた。背景には、中国の不動産大手・恒大集団(Evergrande Group)の資金繰りについて懸念の高まりがあり、連鎖した同国の金融不安などを懸念して世界中でリスク回避の動きが進んでいる。
恒大集団とはどのような企業であり、なぜ僅か1社の動向に世界中が注目を集めているのだろうか?簡単にポイントを整理していこう。
恒大集団とは
恒大集団は、中国・広東省の深圳市を本社とする不動産開発大手だ。創業者の許家印(シュー・ジアイン)は、Alibabaのジャック・マーとTencentのポニー・マーに次ぐ富豪として知られており、中国サッカーの名門クラブ・広州足球倶楽部(以前の広州恒大淘宝足球倶楽部、恒大とAlibabaがオーナーであることに由来する名前)のオーナー企業としても知られている。
1996年、広東省の広州市で設立された恒大は「金碧花園」と呼ばれる集合住宅で一躍注目を集めて、急成長を遂げる。90年代、改革開放以降に加速した経済成長の波に乗ることで、恒大は2009年に香港市場でIPOを果たした。
その後、前述したサッカークラブを2010年に買収したことを皮切りに、電気自動車(中国恒大新能源汽車集団)やミネラルウォーター(恒大冰泉)、音楽制作(恒大音楽)など事業を多角化していく。拡大路線が続いていたが、実は2020年9月時点で債務不履行の可能性が報道されていた。結局この危機は、投資家と債務返済期限の撤廃に合意したことで回避されたが、同社のリスクは残されたままだった。
この時も恒大は、クロス・デフォルト(1つの債務でデフォルトが生じた時、他の全ての債務についてもデフォルトとみなされること)を警告しつつ、地方政府や他の巨大企業に救済を求めたが、今回もほぼ似たような出来事が起きているのだ。