近年、中国ワインが注目を集めている。
1996年の全国人民代表大会で、当時首相だった李鵬がワインの健康効果を絶賛して以来、中国のワイン市場は拡大した。国際ブドウ・ワイン機構(以下、OIV)によると、中国における2020年のワイン消費量は約12億リットルに達しており、1996年と比べて約62%増加となり、世界第6位につけている。英・調査会社IWSRと仏・Vinexpoによる合同報告書では、中国国内のワイン消費額は、2023年までに180億ドルまで達してフランスを追い抜くと予想されている。
こうした市場の中、中国ワインの評価は高まっている。英国のワイン専門誌「Decanter」が主催する世界最大のコンクール(Decanter World Wine Award)では、2021年に4つの金賞を含む156の賞を獲得し、前年の120を上回った。
中国ワインとは何なのだろうか?また、なぜ中国ワインは近年になって高い評価を受けているのだろうか?
中国ワイン製造の歴史
中国におけるワインの歴史は、古くまで遡る。
黄河下流の山東省や西北部の寧夏回族自治区は、ワインの名産地である仏・ボルドー地区と気候が似ており、水捌けの良い土地などブドウ栽培の好条件が揃う。そのため中国では、古代よりブドウを使った酒類が生産されていた。
唐の詩人・王翰(おうかん)の『涼州詞』にも葡萄酒が登場したり、宋代に記された薬学書『本草綱目』にも葡萄酒の作り方が記載されていた。ただし、宋(960年 - 1279年)時代までに皇帝や貴族の間などでワインは広がったものの、黄酒や白酒のように普及することはなかった。
近代ワインの生産
機械による近代ワインの生産は、19世紀後半からスタートする。アジアに近代化の波が訪れ、日本では1870(明治3)年から山梨県甲府市でワイン製造が開始されたが、中国では1892年に山東省・煙台市で設立された「張裕葡萄醸酒公司」がきっかけだった。
ちなみに青島ビールで有名な青島市も山東省に位置しており、煙台市からは車で2時間ほどの距離だ。
煙台市(Google Map)