野田聖子少子化相は30日、「こども庁」の創設時期について2023年度とする意向を示した。年内には基本方針を固め、来年の通常国会で同庁設置法案を提出する予定となっている。
こども庁は、今年1月に菅政権下で創設が議論されはじめ、岸田政権に引き継がれた。来年度(2022年度)中の設立を目標としてきたが、今年の自民党総裁選や衆院選などにより議論が停滞したことで、先延ばしとなった形だ。
重要な理由
2018年に起きた幼児虐待事件などを契機として動き始めたこども庁は、少子化対策や子育て支援に対応する司令塔となる。
デジタル庁と並ぶ菅政権の肝入り政策であり、総裁選でも岸田文雄首相が創設を訴えたことで、次期政権に引き継がれた。また衆院選では立憲民主党も「子ども省」創設を主張しており、与野党共通の政策課題であったため、その実現に向けて注目が集まっていた。
子育てや教育政策については、すでに内閣府特命担当大臣の少子化対策担当などのポストがあるものの、今回のこども庁設置によって政策の担当省庁が一元化されることが特徴だ。
これまで関連する政策は、厚生労働省や文部科学省、内閣府など複数省庁にまたがって実行されてきた。しかし、ひとり親支援は厚労省、子育て支援は内閣府など管轄・予算が分かれていたため、スムーズで一体化した支援が不十分だったことが問題視されており、今回の設置により
- 年齢による切れ目が生じない支援
- 省庁間の縦割り打破
が目指される。
背景
こども庁創設の背景には、子ども・若者を取り巻く状況への懸念や人口減少への危機感がある。
児童虐待やいじめ問題以外にも、子どもの精神的幸福度の低さや妊産婦の死因トップである自殺問題、ひとり親世帯の相対的貧困率など、子どもを取り巻く問題は多岐にわたっている。
しかし、その解消は府省庁間の「縦割り」、地方自治体との「横割り」、子どもの年代による行政の分断による「年代割り」という3つの壁に阻まれているとされる。実際、過去には文部科学省が所管する「幼」稚園と、厚生労働省が所管する「保」育所を一元化して所管する「幼保一元化」構想が頓挫してきた歴史もある。
今回も、義務教育を所管する文部科学省と各省庁との調整が難航していると報道されており、新設されたこども庁が幅広い問題に機動的に対応できるかが注目される。
また少子化や人口減少については、野田聖子少子化相が自民党総裁選から強く訴えてきた他、これまでの政策によって問題に歯止めがかかっていないことが指摘されてきた。急速な人口減少が「経済産業や社会保障の問題にとどまらず、国や社会の存立基盤に関わる問題」と認識される中、こども庁設置によって実行力のある政策が打ち出されるかもポイントとなる。