今日2日、松野博一官房長官は航空会社に対する国際線新規予約の一律停止要請を撤回したことを発表した。
政府は昨日、オミクロン株の感染拡大を受けた水際対策として12月末日までの1ヶ月間、日本に着陸する国際線の新規予約停止を要請していた。この要請撤回は、岸田文雄首相が「日本人の帰国需要に十分に配慮するよう」要請見直しを指示したことを受けての動きだ。
重要な理由
昨日の要請をめぐっては、海外にいる日本人が帰国できなくなる可能性が問題視されていた。海外から帰国予定であるものの航空券の予約を取っていない日本人にとっては、年内に帰国できなくなる懸念が強まり、困惑と反発が広がっていた。
政府は「緊急避難的な予防措置だ」と説明していたものの、航空会社からは「厳しすぎる措置だ」とする声があがり、専門家からは「日本人を含めた全ての帰国者が対象になるのは前例がない。日本人の保護の観点から強すぎる措置だ」との指摘も出ていた。
さらに、この水際対策には世界保健機関(WHO)からも批判が挙がっている。WHOの緊急対応責任者であるマイク・ライアン氏は、日本による外国人への入国制限政策について「疫学的には理解困難だ」と批判している。
同氏は「ウイルスは、あなたの国籍やパスポートを選ばない」と述べて、日本人と外国人を区別することは意味がないとした上で、検査や隔離などの徹底により感染拡大は防げると強調し、「感染拡大を防ぐ手段は、公衆衛生上の原則に基づくべき」との見解を示した。
今回、航空各社への要請は撤回されたものの、その他の強化された水際対策は継続される。具体的には、日本人を含めた入国者の人数制限は1日あたり5000人から3500人までに引き下げられ、留学生やビジネス目的などの外国人は原則として入国停止となる。
背景
現時点で、日本は「最も厳格で広範な」入国制限を設けているが、各国による今後の対応も不透明だ。先月28日時点で、すでに56ヶ国が渡航制限を開始しているが、2日には米国でもオミクロン株の感染者が確認されており、バイデン大統領は入国者に対する追加措置を明日にも発表する予定としている。
新型コロナの感染者数が増加している韓国では、ワクチン接種済みの旅行者への検疫免除措置を2週間停止する対策が3日から開始される他、インドネシアでは、旅行者の検疫期間を7日から10日に延長する予防措置も取られる。
年末にかけてオミクロン株が広がりを見せたことで、経済への影響も予想されている。年末やホリデーシーズンの旅行需要を見込んでいた航空会社にとっては大きな打撃が想定され、今回の要請撤回についても安堵の声も出ているが、影響は避けられない。エミレーツ航空のティム・クラーク社長は、12月は航空業界にとって「重要な月」だとした上で、オミクロン株の流行によって世界の航空各社に打撃が予想されると危惧している。
オミクロン株の感染拡大は、サプライチェーンにも影響を及ぼすとされている。特にサプライチェーンの核となる中国は「ゼロコロナ」政策を推進しており、今後さらなる検疫強化がおこなわれると予測されているため、原材料や部品の調達、製品の組み立てなどに影響がでる可能性がある。解消されつつあったサプライチェーンの遅滞やインフレへの影響についても、再び電子機器や自動車などの製造部品が不足することで、再燃していく可能性があるだろう。