『21世紀の資本』で知られるパリ経済学院のトマ・ピケティ教授やカリフォルニア大学バークレー校(UCバークレイ)のガブリエル・ズックマン准教授、UCバークレイのエマニュエル・サエズ教授など、経済格差研究の第一人者たちが発表した世界不平等レポート2022(World Inequality 2022 Report)にて、世界全体の労働所得に占める女性の割合は35%弱であることが発表された。研究チームは「男女平等の世界ならば、女性は所得全体の50%を稼ぐことができるだろう」と述べ、賃金における男女平等の進展は非常に遅いことを指摘している。
世界的にも日本は、男女の賃金格差が顕著にある国として知られている。国際労働機関(ILO)や国連女子差別撤廃委員会などからも、男女の賃金格差是正に関してさらなる取り組みを求められている。
日本にはどのような男女の賃金格差があるのだろうか?その現状について、いくつかの属性から見ていこう。
日本における男女間賃金格差の歴史
日本における男女の賃金格差は未だ解消されていないものの、その差は年々縮小されている。
1976年から1986年まで男女の賃金格差の数値(男性の年収を100とした場合の女性の年収)は59を前後していたが、1986年に男女雇用機会均等法が施行されたことをきっかけにその格差は徐々に縮まっており、2000年には65.5、2019年には74.3と改善が見られた。
性別賃金の推移(厚生労働省, CC BY 4.0)
男女の賃金格差に対する法的な禁止
背景には、様々な法制度などによって男女の賃金格差を解消する取り組みが進められてきたことがある。
1947年の男女同一賃金法は、男女の賃金格差の是正に向けた第一歩だった。その後、1967年にILOが定めた「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬に関する条約」を批准。1985年に「女子差別撤廃条約」が発効されたことを受け、1986年には男女雇用機会均等法が施行された。
このように、女性に対して「女性であることを理由とした」賃金の差別は、男女同一労働同一賃金を前提として法的に禁止されることとなった。
しかし日本では、後述するように正規・非正規雇用の割合の違いや、男女間の職業の偏りなどによる賃金格差が存在しており、同一労働における賃金格差の是正だけでは問題解決に至っていない。国連・女子差別撤廃委員会も「職種の違いやコース別雇用管理制度に現れるような水平的・垂直的な雇用分離から生じている男女間の賃金格差の存在」を問題視している状況だ。
男女の賃金格差の現状
では、男女の賃金格差はどのような現状にあるのだろうか?
2020年の統計によると、給与所得者における男性の平均賃金は532万円なのに対し、女性は239万円に留まっている。さらに、正規雇用者よりも賃金の低い非正規雇用者の割合についても、男性が 22.2% なのに対して女性は 54.4% となっており、雇用形態からくる男女の賃金格差が大きい状態だ。
以下では、年齢や学歴、正規・非正規などの属性から、日本における男女の賃金格差を見ていく。