14日、韓国のボーイズグループ BTS(防弾少年団)が、グループとしての活動を休息しつつ、当面はソロ活動に入ることを YouTube 番組『真のバンタン会食』で明らかにした。BTS といえば、2020年の「Dynamite」や2021年の「Butter」によって世界的ヒットを記録し、いまや21世紀のビートルズと呼ばれる存在にまでなった K-POP アーティストだ。
また商業的成功のみならず、国連の演説やバイデン大統領との面会など、若い世代に影響を与える立場から、社会的メッセージも数多く発信しており、まさに人気絶頂の中にあると言える。一方で最年長メンバーのジンは、韓国の兵役義務が近づいており、グループとしては活動のあり方を見直さざるを得ない局面でもあった。
本記事では、簡単に BTS の活動休止(*1)の背景および所属事務所 HYBE の戦略を説明して、その後、近年のK-POPが直面している問題と新たな変化について、韓国内での議論も踏まえて解説する。具体的には、以前の記事で見たような過酷な育成システムとスケジュール、メンタルヘルスの問題などを受けて、BTS や GOT7のように新たなアイドル(*2)像を模索するグループが生まれていることを概観しつつ、ファンダムの責任にも触れていく。
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(*1)ただし事務所は「活動休止は意味せず、個人活動の活発化を予告しただけ」と説明している。後述するように、事務所側には株価下落を受けて市場の反応を沈静化したい思惑もあるだろうが、本記事ではひとまず「休息」と記載する。またジョングクも、翌日のVライブで解散や休止を否定している。
(*2)本記事では、文脈に合わせてアイドルとアーティストを使い分ける。
BTS、休息の必然性
2013年にデビューした BTS は、当時3大事務所と呼ばれていたSMエンターテインメント・YGエンターテインメント・JYPエンターテインメント以外の中小事務所からデビューしたにもかかわらず、2015年の「I NEED U」や「RUN」などの楽曲が収録された『花様年華』シリーズによって、成功を収める。
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中でも2018年以降は、楽曲「FAKE LOVE」を Billboards Music Awards で披露したことを皮切りに、毎年米国の音楽祭典などに招待され、国際的な名声を確立していく。
ただし、その成功は一筋縄とはいかず、非英語詞であるため(米国チャートの重要な要素である)ラジオでの再生回数が増えない問題や、コロナ禍によるアジア人差別など、逆境を跳ね除けながらの戦いとなった。
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そうした困難を抱えながらも、2018年のアルバム『Love Yourself 轉 ‘Tear’』で Billboard 200(アルバムチャート)で1位を獲得。Billboard 100(シングルチャート)についても2020年の「Dynamite」を皮切りに、通算6曲が1位となる大成功を収めた。またグラミー賞は逃しているものの、American Music Awards や Billboard Music Awards といった祭典でも記録的な受賞を成し遂げ、名実ともに世界のトップアーティストとなった。
こうした BTS だが、大きく4つの側面からグループとしての休息は必然的なものだったと言える。具体的には世界的成功による負担、兵役によるグループ活動の停止、アーティストとしての要請、個人活動の制限だ。
1. 世界的成功による負担
まず言うまでもなく、世界的な成功によってメンバーには多大な負担がかかっていた点がある。
メンバーの RM は今回の休息について「活動が辛いと言いながらも(休息に)罪悪感を感じるのは、みなさんから非難を受けるんじゃないかと...休みたいと言うことで罪悪感を抱きます」と語り、休息が必要だと理解しながらも、申し訳なさを感じる気持ちを吐露した。
後述するが、これは過酷なスケジュールによる身体的負担のみを指すわけではない。厳しい育成システム、事務所による統制された商品性、ファンダムによる「正しいイメージ」への期待、作品やアイドルへの「完成度」への論評、「丁寧で控えめながら、自分の仕事に情熱ある姿」を演じることで、アーティストは多大な心理的負担を抱えてきた。
心身ともに疲弊するアーティストに休息が必要なことは、言うまでもない。実際 BTS は、ワールドツアー「Love Myself」が終了した2019年夏にも2ヶ月間の長期休暇を取得しているが、これ自体が K-POP 業界では異例な出来事だった。この年は、ジョングクとジミンが相次いで負傷する事態に直面しており、メンバーの健康状態を心配する声も高まっていた。
2. 兵役によるグループ活動の停止
次に、最年長のジンをはじめメンバーには順次兵役義務が課されるため、グループ活動の停止を余儀なくされる点だ。
韓国は、満20-28歳の韓国人男性に兵役義務が課されている。1950-53年、北朝鮮との間で起こった朝鮮戦争は、現在でも「休戦状態」の扱いであり、韓国において兵役義務は国民的な議題である。一方、国際大会などで功績を残したスポーツ選手や文化人には兵役の免除・延期などが認められてきたため、BTS の韓国文化に対する功績を考えて、彼らの兵役免除を求める声は根強い。
兵役法改正案が国会を通過しない場合、ジンは今年末までに入隊が義務付けられており(*3)、いずれにせよ完全体での活動が難しい状況にあった。改正法の通過および施行による入隊免除が現実的に難しいため(*4)、このタイミングでの休息・ソロ活動が選択されたと見られている。
ちなみに、SUPER JUNIOR(デビュー当初13人)や EXO(デビュー当初12人)、NCT(現在は23人で拡大中)のような大規模グループであれば、個々のメンバーが兵役中であってもグループ全体の活動中断を避けることが出来る。ただし、芸能人の兵役免除については過去・現在問わず批判的な声があり、アーティスト自身にとっても必ずしも望ましいわけではない。実際、BTS の功績は認めるものの、それならばイカゲーム出演者やeスポーツ選手も免除すべきという反論も表出している。
(*3)ジンは2020年の大衆文化芸術分野の優秀者に選定されたため、30歳になる今年まで入隊延期が認められている。
(*4)施行までには通常6ヶ月かかるため、6月末までに改正法が通過しなければ免除は不可能となる。
3. アーティストとしての要請
そして、アーティストとして成長・成熟するために休息が必要となる点だ。
SUGA は「歌詞や語る言葉が出てこなかった」として「無理やり絞り出していた。今は、自分には本当の言葉が無く、何を言うべきか分からない」と述べ、作品をつくる上での苦悩を語った。
また RM も「いつからかラップを書く機械になり、英語を頑張って、それで自分の役割が終わって...」とした上で「K-POPもそうだし、アイドルというシステム自体が、人を成熟させない気がする。ずっと何かを撮影しなくてはいけないし、ヘアメイクをしたり、色々していたら成長する時間がない」と語り、スケジュールをこなしながらアーティストとして成長することが困難だと述べた。
事務所によって商業的につくられた「アイドル」のイメージとは異なり、BTS をはじめ SEVENTEEN や Stray Kids など、近年はグループのメンバーが作詞作曲からプロデュースまで作品づくりに深く携わるケースが多い。
2018年の楽曲「IDOL」からも分かるように、BTS はアイドルと呼ばれながらもアーティストとしての自負を強く持っており、それはデビュー以来一貫したスタイルだった。
ところが、状況が一変したのがコロナ禍だった。本来、2020年のアルバム『MAP OF THE SOUL : 7』で第一章の活動が終わる予定であったが、大規模ワールドツアーの延期などによって「Butter」や「Permission to Dance」など商業的成功や英語圏でのヒットを意識した作品づくりに集中した。これによってメンバー自身も、アイデンティティを見失う事態に陥ったと語っており、アーティストとしての苦悩が深まったことが予想される。
韓国の専門家は、今回の休息について「工場式アイドル量産システムの問題が露呈したもの」として、「アイドル産業が持続可能となるには、アイドルを企画商品ではなくアーティストとして見なければならない」と指摘する。アイドルでありながらもアーティストであるバランスを保つことは、グループが持続可能であるための必須要件と言えるだろう。
4. 個人活動の制限
アーティストとしてのあり方とも関係するのが、個人活動の制限という点だ。
BTSメンバーは、これまでも個人で楽曲を発表しているが、あくまで「ミックステープ」(非正規アルバム)であるため、韓国内の音源サイトではそれらを聞くことが出来なかった。グループ活動の優先によって実質的には個人活動が制限されてきたことで、アーティスト個人としての能力を発揮する機会が奪われていたと言える。
また俳優活動としては、ブイが2016年のドラマ『花郎』に出演して以降、いずれのメンバーもおこなっていない。今回の発表でも、ブイは「音楽活動以外の多方面の魅力をお見せしたい」と語っており、ソロ楽曲以外の演技活動などにも力を入れることが予想される。もともと俳優志望だったジンや、過去のインタビューで俳優業に前向きな姿勢を見せたジョングクをはじめ、他のメンバーの活動も多角化していく可能性がある。
BTS メンバーは、近年韓国内の音楽番組やバラエティ番組にほとんど出演しておらず、こうした選択もグループとしてのイメージ戦略との兼ね合いが指摘されている。ジンはバラエティ番組出演に意欲を見せており、出演状況にも変化が生まれるかもしれない。
以上の4側面から、BTS のグループとしての休息は必然的なものであったと言える。
事務所の戦略
とはいえ、BTS が休息することは所属事務所らにとって多大な経済的損失となる。実際、今回のニュースを受けて HYBE 株価は 27.5% 下落している。
同社は、上場前から収益における BTS 偏重が事業リスクとされており、他社レーベルの買収と新人アーティストの育成によって、この問題を解消しようと試みてきた。具体的には、
- BTS の後輩グループ TOMORROW X TOGETHER(TXT)のデビュー(2019年)
- オーディション番組から輩出した ENHYPEN のデビュー(2020年)
- SEVENTEEN などが所属するPLEDISエンターテインメントの買収(2020年)
- SOURCE MUSIC の買収による新人グループ LE SSERAFIM のデビュー(2022年)
などが立て続けに進められた。また2021年には著名音楽プロデューサーのスクーター・ブラウンが経営するイサカ・ホールディングスを買収し、国際展開も強化している。
現時点で BTS に匹敵する後輩グループは現れていないが、このタイミングで BTS が休息を明言できた背景には、こうした多角化が一定度まで進んできたこともあるだろう。
上場後の圧力
ただし、上場によって急成長を求められた HYBE が「工場式アイドル量産システム」への偏重を余儀なくされ、結果的に BTS への負担が増大した可能性も考慮する必要がある。
もともと HYBE は「アーティスト・フレンドリー」の事務所を自認しており、BTS の成功要因についても
- アーティスト・フレンドリーな契約条件
- アーティストの自律性の尊重
- コストと人材の十分な投資
- 会社とアーティストの合理的な力関係
- テクノロジーの活用、コアコンテンツに基づいた多様な収益モデル
などが挙げられてきた。こうした環境の中で、BTS はアイドルとアーティストの両立を実現してきたと見做されていたが、今回の発表で彼らもまた限界に達していた事実が露呈した。
これが K-POP やアイドルにとって避けられない不可抗力なのか、それとも HYBE が世界有数の企業へと急成長した歪みなのかは分からないが、4つの側面に加えて、事務所の戦略もまた BTS のあり方を左右してきた重要な要因だった。
K-POPが抱える構造的課題
そして、より重要なことは今回の BTS の休息が、より大きな議論を投げかけたことだ。
ここまで見てきた4側面は、必ずしも前向きな理由ばかりではなく、「アイドルというシステム自体が、人を成熟させない気がする」という RM の指摘は、 BTS のみならず K-POP 業界全体が直面している問題でもある。
冒頭の関連記事で詳しく述べたように、K-POP アーティストは
- 完璧なパフォーマンスの要求を満たしつつ、経済的利益を生むための過酷な労働環境
- SNSによる大衆からの監視と、誹謗中傷にすら笑顔で対応する「感情労働」
- 「インハウス・システム」と「精算」と呼ばれる身体的な負担や経済的な困窮
- 脆弱な思春期における過重労働と、僅かな成功者のみが約束された絶望的なキャリア
などに直面している。これらを一言でまとめるならば「K-POP の体系的なビジネスモデル」という構造的課題から生まれる弊害だと言える。前述した3大事務所が
キャスティングから練習生のトレーニング、コンテンツ制作におけるプロデュース、広報から流通まで続くマーケティングなど、全過程を「K-POP システム」として構築
したことは、BoA から BTS まで続く K-POP 業界の国際的な成功をもたらしたが、その反動としてアーティスト個人への負荷が増大しつづける副作用を生み出した。
こうした業界の問題は、BTS の世界進出とともに国際的な批判も浴びてきた。たとえば f(x) のメンバーだったソルリと KARA のハラの極端な選択を受けて、The New York Times 紙は育成システムやネットいじめなど、業界が抱える問題を指摘している。また Washigton Post 紙は、韓国のミソジニーや保守的な文化という背景から、アイドルが受けるプレッシャーに触れつつ、所属事務所であるSMエンターテインメントのサポート不足を示唆した。
また以前に BTS が休暇を取得したことは多くのファンから称賛を集めたが、それは業界における例外的な出来事であり、後に続くアイドルは殆どいない。また女性アイドルは、男性よりも不均衡なリスクに晒されていることも指摘されており、ジェンダーの問題も重くのしかかっている。BTS メンバーもまた業界構造がもたらす弊害を被っており、LA Times 紙は致命的なライフスタイルの結果、ジミンも過去に、過酷なダイエットに代表される拒食症の兆候を示していたことを指摘している。
つまり、BTS をはじめとする輝かしい K-POP の成功は、アーティスト個人への極度な負荷によって成立しているのだ。
新たなアイドル像の模索
こうした問題は現在でも未解決だが、今回の BTS の休息に代表されるように、少しずつ変化の兆候も生まれている。言い換えれば、アーティスト性と商業主義など構造的問題は必ずしも二項対立ではなく、両者は緊張関係を持ちつつも、過去10年以上にわたって少しずつ変化と是正が生じてきたという事実だ。
問題の所在の発信
まずは BTS のように、成功したアーティストが長期休暇を取得し、メンタルヘルスについて語り、自己愛に関する楽曲を制作する機会は、ますます一般的になってきた。2018年、SUGA はうつ病や強迫性障害、対人恐怖症に苦しんだ過去を明らかにして、作品をリリースした。2020年は、ジンがバーンアウトに陥った経験を楽曲としてリリースしている。
とはいえ BTS がタブーを打ち破れるのは、彼らが商業的に大成功を収めたからだ。未だ大半のアーティストは、社会的なコード(規範)と所属事務所による厳しい規律を課されており、旧来のアイドル像に従うことを余儀なくされている。
「工場式アイドル量産システム」との決別
こうした中で、新しい挑戦をおこなっているのが元JYPエンターテインメントの GOT7 だ。
TWICE や NiziU、ITZY や NMIXX らの先輩グループで、昨年同事務所を離れたグループは、各メンバーが現在異なる事務所であるにもかかわらず、今年5月にカムバックを果たした。大手事務所の力が強い K-POP 業界において、所属事務所を離れたグループがグループ名を変えないまま、メンバー全員で再度活動することは、異例の出来事だ。
GOT7 のメンバーは、JYPエンターテインメントからの再契約条件は悪くなかったとしつつも、個人活動への考え方の相違から、全員が事務所を離れたと明かしている。彼らは「工場式アイドル量産システム」から離れつつ、持続可能なアイドル像を模索して成功つつある存在だ。
またグループのリーダー JAY B は、韓国の人気スターのエリック・ナムが運営するメディアで、メンタルヘルスの問題を語っている。GOT7 メンバーがJYPエンターテインメントに所属したまま、個人活動の充実と社会的問題に関する発信をおこなうことは難しかったことが予想される。
契約慣習の変化
また少し時代を遡れば、現在一般的になっている7年間の標準契約が2009年に導入されたことも、大きな変化だった。それまでは10年を超える長期契約に縛られ、多額の違約金や事務所に有利な契約条項によってアーティストが強い制約を受けていたが、この状況は国外から奴隷契約と批判され、韓国・公正取引委員会の調査を通じて是正された。
重要なことは、この不公正な契約慣習が変化するためには、アーティスト自身の異議申し立てが重要な役割を果たした点だ。東方神起の元メンバーや EXO の中国人メンバー、B.A.P など、2010年代は人気アイドルが次々と所属事務所と法廷闘争をおこなっており、これらは業界の不均衡な慣習・契約を社会的議論に引きずり出した。
現在でも問題は残されているが、少なくとも不公正な契約慣習そのものは減少し、「規制が産業発展に肯定的な影響を及ぼした」と見なされている。
労働環境の変化
K-POP ではないが、隣接する業界では労働環境にも変化が起こっている。映画『ベイビーブローカー』の是枝裕和監督は、韓国映画業界の労働環境が変化していることを指摘するが、実際に同国では2018年から週52時間以上の労働に制限を設けており、その動きはドラマ撮影にまで広がっている。
過酷なスケジュール以外にも、自主的なトレーニングや日常生活の SNS での発信も "業務" となるアイドルにとって、労働時間を定めることは容易ではないだろうが、労働環境の是正自体は避けられない流れとなるかもしれない。
残り続ける問題とファンダムの責任
とはいえ、変化と是正を前向きに捉えるだけでは不十分だろう。
たとえば K-POP の低年齢化は続いており、たとえば NCT Dream のデビュー時における平均年齢は満15.6歳で、TRI.BE や Billie のように15歳以下でデビューするメンバーを擁するグループも増えている。最近では、JYPエンターテインメントと P-Nation が実施した番組で、12歳の日本人メンバーのデビューが決定し、年齢から批判を集めたことで撤回される事態も起こった。低年齢化によって、K-POP の構造的課題から受けるリスクがますます高まることは言うまでもない。
また BTS などの世界的な成功によって、アーティストの活動地域や量、求められる卓越性(ダンスや歌唱力に加えて、言語力など)、リリースサイクルなどは加速しており、その競争環境や要求水準がますます高くなっていることも事実だ。
韓国社会の自画像
「スピードと競争社会、それによる消耗や枯渇などの問題を抱える "K-POP システム" は『韓国社会の自画像』」とも称される。これまでメンタルヘルスやジェンダー、人種差別などの社会的問題に声を上げてきた BTS が、格差や競争社会が問題視される韓国において、自身も恩恵を受けていた産業構造の問題を指摘したことは偶然ではないだろう。
BTS のメッセージは、K-POP と韓国社会が抱える暗部を示唆しているが、同時に日本もまた、K-POP の成長を初期から支えてきた市場(マーケット)である。言い換えれば、韓国に限らず日本をはじめとするグローバルなファンダムもまた、その構造を強化させ続けることで "K-POP システム" をつくりあげ、アーティストを消耗させていった共犯者ですらある。
BTS のファンダムである ARMY は、Black Lives Matter 運動に合わせて多額の寄付金を集めるなど、BTS の活動と呼応して、社会的な取り組みを行ってきた。こうしたポジティブな取り組みは称賛されるべきだが、同時にファンダム自身が "K-POP システム" に加担し、アーティストに負担を強いてきた現実にも向き合うべき時が来ているのかもしれない。実際、一部のファンは HYBE に対して、アーティストの過度な商品化を抗議しはじめている。
2018年、RM が国連で「LOVE MYSELF(私自身をまず愛そう)」という演説を行った。次はファンダム自身が、アーティストが彼ら自身を愛せるように、"K-POP システム" の是正を訴えていくタイミングなのかもしれない。