ロシアによるウクライナ侵攻が現実となった今年2月下旬、米大手銀行 Bank of America(バンク・オブ・アメリカ、BoA)が FAANG 2.0(*1)と呼ばれる新たな投資アイデアを提案した。これからの世界秩序において、株式市場を牽引する可能性のある5つの産業を指す言葉だ。
実際、BoA による予測は現実のものとなり、それらの産業はロシアによるウクライナ侵攻が開始されて以降、目覚ましい株価の成長を見せている。例えば、 FAANG 2.0 における5分野の主要上場投資信託(ETF)の平均価格は、ウクライナ侵攻が開始された2月下旬以降の上昇率で市場平均を17%と大きく上回っている。
FAANG と呼ばれた米ビッグテックが世界中の投資家やユーザーの注目を集めて巨額の投資を引き寄せてきたように、FAANG 2.0も同様に世界中からの投資マネーの向かう先となるのだろうか。
FAANG 2.0 は一体何を意味しており、どのような背景で注目を浴びるようになったのだろうか。
(*1)英語で FAANG 2.0と表記されることが主流だが、日本語メディアでは「新FAANG」と表現されることもある。
FAANGから FAANG 2.0へ
Apple に代表されるビッグテックと呼ばれた巨大IT企業群を指す FAANG は、2017年に登場して株式市場に浸透した。
米国の株式評論家であるジム・クレイマー氏によって2013年に提唱された FANG という言葉が先に株式市場で用いられるようになり、その4年後に米・Apple が加わる形で生まれたものだ。
FAANGとは
そもそも FAANG とは米巨大IT企業5社の頭文字を組み合わせた言葉であり、2021年には合計時価総額がおよそ1,000兆円に到達するなど圧倒的な存在感を発揮してきた。場合によっては、5社に限定せずアメリカのビッグテック企業群全体を指すこともある。
FAANG の5文字が示すのは、それぞれFacebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Netflix(ネットフリックス)、Google(グーグル)の5社だ。いずれも、2000年代以降に時価総額の高い企業として株式市場の動向に大きな影響力を持ち、新サービスの投入や経営方針など、世界中の投資家や消費者からの注目が集まってきた。
こうして巨額投資が集まった結果、FAANG 5社の時価総額は、21年12月に7兆8,000億ドル(約1,000兆円)を超えるまでに成長した。この時期には Netflix を除く4社が世界時価総額ランキングの上位7社に入っており、Netflix も44位につけていた。これらの企業は過去10年ほど、アメリカ国内の株式市場の動向を示す S&P500 種指数を大きく押し上げることに貢献してきたと言える。
停滞するFAANG
しかしFAANGの成長は、永遠に続くものではなかった。コロナ禍で株価がピークに達したFAANG各社の株価は、2022年に入ってから徐々に下落に転じていった。
例えば、FAANGのひとつである米 Netflix は、10年以上ぶりに会員数が減少に転じたことも影響し、4月中旬に株価がおよそ35%急落した。金額にしておよそ6兆円の市場価値が失われたことになる。
また、Facebook から社名を変更した米 Meta も、今年2月上旬に発表した第4四半期決算を受けて株価が20%以上低下した。Facebook の利用者数が前期から横ばいであることに加えて、1株あたりの利益が市場予想を下回ったことが影響したと見られている。
こうしてFAANG5社の時価総額は、先に述べた21年12月時点の7兆8,000億ドル(約1,000兆円)を超える水準から、今年6月10日時点で約5兆4,000億ドル(約730兆円)にまで低下した。
「新たな世界を映す」FAANG 2.0
FAANG が失速する中、新たに BoA によって提案されたのが FAANG 2.0 という考え方だ。この新しい投資の概念は、米ビッグテックの次に注目される投資領域とされ、「新たな世界を映す」重要な投資概念とも言われる。
例えば米・Bloomberg は、すでに FAANG 2.0 の株価変動をウォッチする指標を公開している。日本でも、テレビ東京が FAANG 2.0 への投資可能性を番組内テーマとして扱っており、国内外の投資家からコメントが相次いでいる。
FAANG が個別企業の名前をとって命名されたのに対して、FAANG 2.0 は今後の成長可能性を持つ5つの産業の頭文字を取っている。該当する分野は以下だ。